統計的思考のメリット
人の脳は理性的思考になっており、統計的思考に切り替えるためには、意識して努力しなければならない。毎日の判断で数字をどのように使えばいいかを知れば、、物事に対して正確な判断を下せる可能性が高くなる。
統計的思考の5つの特徴
①常に「ばらつき」に注目する。
統計的思考は、「平均」からのばらつきに気づき、その意味を理解するところから始まる。車で通勤する人がイライラする理由は、平均的な所要時間でなく、予測不能な事故や天候によって起こる想定外の遅れである。ばらつきが不安定さをもたらし、不安を生む。そのため、交通渋滞への対応には、ばらつきへの対応が鍵となる。
すべての保険契約者が同時に保険金を請求した場合、保険会社は支払い不能で破綻する。アクチュアリー(保険数理士)は、相関関係のない様々なリスクを大量に組み合わせることで、平均的な保険金支払額を予想し保険料を算出する。保険金請求のばらつきを想定していなかったハリケーン保険は、たった1回のハリケーンで剰余金が吹き飛んだ。
②真実より実用性を優先させる。
クレジットスコア(与信)の統計モデルは、信用度について相関関係のある特徴を見つけ出し、支払い不能に陥りそうな人と大丈夫な人を見分ける。しかし、実際にある人が支払い不能に陥るかどうか、という真実はわからない。それでも、実用的であるクレジットスコアは利用される。
③似た者同士を比べる。
先進国と途上国の航空会社の墜落事故率は、途上国の方が高い。では先進国の人は先進国の航空会社を選ぶべきかというと、そうとは言えない。国際路線で比較した場合には、先進国と途上国の事故率はほとんど変わらないのである。つまり、途上国の事故率は国内路線で高いのである。何でグループ分けするかは統計上、注意しなければならない。
④2種類の間違いの相互作用に注意する。
ドーピング検査において、「間違った陽性反応」を無くそうと検査の基準を緩めると「間違った陰性反応」を見逃すことになる。2つの間違いは統計学的に相殺されてしまい、避けられない。アスリートは間違った陽性反応には抗議するが、間違った陰性反応には抗議しない。裏で多くのドーピングがあっても見過ごされている場合がある。
⑤稀すぎる事象を信じない。
統計学者は「めったに起こらないことはありえない」という考え方をするので、飛行機に乗ることを怖がらないし、おそらく宝くじは買わない。