なぜ「上から目線」が気になるのか
近頃は、上位の人の言葉に対しても「上から目線で言われてイラッときた」というセリフを耳にする。うっかりアドバイスをすると「上から目線」と反発されるから、言いたいことも言えないとい嘆く上司や先輩も少なくない。
「上から目線」を口にする人には、そもそも相手の方が経験も知識も豊かで、こちらにアドバイスができる立場にあるといった認識や敬意が欠けている。
目上の人の助言を「上から目線」と非難するタイプの人は、見下されるのではないかという不安が強い。そのため、本来は役に立つアドバイスも、こちらに対して優位を誇示する材料だと受けとめてしまう。
そして、人を見下す傾向のある人に限って、人が自分を見下すのではないかといった恐れを抱きがちである。従って、人より優位に立ちたいのに、現実にはそうならない自信のない人が、相手の「上から目線」を過度に気にする。
上から目線だと反発される原因には「言い方」の問題もある。一方的で強引な姿勢には、目線そのものへの反発というより、言い方への反発が強い。指示を出すにも、相手の言う事に耳を傾けることが大事である。
「上から目線」の心理構造
私たちは、物事を自分の持っている枠組みや図式で判断する。「上下」「勝ち負け」にこだわる時に、相手の態度や言葉に「上から目線」を感じることになる。
自己愛は「上から目線」と関係が深い。自己愛には「誇大型」と「過敏型」の2つに分類される。
・誇大型自己愛
自分は特別という意識が強く、自己愛が強い。仕事では特別な成果をあげた訳でもないのに、自分は特別に才能があると思い込んでいるような言動が目立つ。「勝ち負け」の構図で何でも見る癖があり、誰に対しても「上から目線」となってしまう。
・過敏型自己愛
他者の反応に過敏で、いつも人の顔色をうかがっている。自信のなさを偉そうに振る舞うことで克服しようとする誇大型自己愛に対し、おどおど自信のなさを漂わせ、人の目ばかり気にするのが、過敏型自己愛である。
過敏な感受性で人の言動を受けとめるため、相手の何気ない言葉も「上から目線」と感じてしまう。