人口ボーナスによる経済成長
インドネシアの人口は約2億4000万人、国土面積も世界20位以内に位置し、その2倍近い面積の領海を持つ。一方で人口や国土の大きさに比して、GDPでは世界21位以下の国であり、その優位性をまだ活かせていない。
しかし、2004年からの民主主義体制の確立によって、経済が成長を持続できる素地が整った。経済成長率は2007年に10年ぶりに6%台に回復、2011年は6.8%となった。
インドネシアでは毎年、200〜300万人の新規参入労働者が発生するため、雇用維持のため最低6%の成長が必要となる。政府は年平均6.55%成長の目標を設定し、実現すれば2014年までに名目GDPは1.1兆ドルに達する。大規模な人口は、成長が伴えば迫力あるエンジンとして作動するが、逆に成長できなければ失業と貧困を招く。
インドネシアでは人口ボーナス(出生率が低下し始め、生産年齢人口が総人口に占める比率が高まることで、経済成長が促進される効果)が1970年頃から2030年にかけて60年ほど続く可能性が高い。これから20年、成長のチャンスが続く。
但し、これには①出生率の低下を継続させる、②増加する生産年齢人口に対して就業の機会を与えること、が条件となる。この2つの条件を実現するための政策や制度構築が政府には求められる。これに対して、現在政府は、労働法制の規制緩和による労働市場の柔軟化、教育の改善に力を入れている。
成長主導産業は何か
民主主義体制のもとでは、一つの明確な成長主導産業がある訳ではない。投資主体は、それぞれの特性に応じた利益追求行動をとっているため、農業・農園業、鉱業、工業、サービス業にそれぞれ成長のエンジンができている。
・輸出
1970〜80年代初め:原油が7〜8割
1980〜90年代:5%だった工業製品のシェアが59%に拡大
2000年代:工業製品はシェア41%に減少、原材料、鉱物性燃料、植物油が増加
・投資
外国投資は運輸・倉庫・通信、その他重工業が大きい。内国投資は食糧・農園、食品、紙パルプ・印刷が主要投資先である。外資と内資の間には相互補完的な役割が成立している。
国内大資本は、重工業から農園業、鉱業、新興サービス業へと事業基盤を重点シフトさせている。また、パーム油や石炭の輸出の輸出の担い手になっている。中国から流入してくる廉価な工業製品と競合を避けるこの投資行動は、一方で脱工業化による国内製造業の衰退を招く「オランダ病」現象を生じさせている。
インドネシアは、中国やインドと違って二桁成長はしない。人口ボーナス効果を引き出しつつ、民主主義と21世紀的課題に伴う制約の下では年平均6〜7%成長が妥当であろう。この水準を維持できれば、インドネシアの大国性は充分に活きてくる。