10年後の経済
・中国では雇用確保のために7〜8%程度の経済成長率が必要である。現状、中国は10%のペースで成長している。2020年代には米国を抜くという推測もある。しかし、あまりに高い成長率は、エネルギー・資源の大量消費による環境問題を引き起こし、問題となっている。
・中国の失業率は4%程度と発表されているが、実際は10%近いと推測される。中国には、政府が使える資源が潤沢にあり国全体の失業率が急激に深刻化することはない。しかし、大学を出た若者の失業問題は深刻化する。
・住宅、車、海外旅行などの豊かな生活を楽しむ「中間層」が3億人前後に達している。今後、彼らの権利意識が中国社会を動かしていく。
・豊かさの底上げはされているが、格差はますます広がる。都市と農村、都市と都市、農村と農村と複雑な格差問題は解決策が見えない。再分配を良しとする合意が国内にない。
・物価の安定または国際社会へのアピールのためにしか、人民元の切り上げは行われない。
・不動産バブル崩壊はあるかもしれない。しかし、バブル現象は上海や北京、沿海部の一部であり、バブルが崩壊しても、その影響は中国全体で吸収される。
・中国の人件費は上昇しているが、内需が存在することからも「世界の工場」は続く。
10年後の政治
・習近平は、都市と地方の格差を是正し、バランスの取れた社会を目指しながら、成長も求める政策を取るだろうが、その道は険しい。
・共産党の一党独裁体制は、10年で終わることは考えにくい。しかし、中国はいつか必ず民主化する。その理由は①国民の納税者意識の高まり、②精神的価値の希求、③一党独裁下における利益調整の困難。
・10年間の間に、大規模な騒乱やデモが発生する可能性はある。
・現状はナショナリズムが旺盛であり、中国が10年以内に分裂することはない。しかし、悲願である台湾との統一が実現すれば、地域ナショナリズムが強まるかもしれない。
10年後の社会
・2015年には、65歳以上の高齢者人口は2億人を超え、人口の17%に達する。
・急速な高齢化の原因となった「一人っ子政策」は、都市と農村の利害が一致せず、緩和に踏み切ることはできない。
・貧困層は医療難民と化す。都市、農村の双方で無年金者が続出する可能性がある。
・「男余り」が深刻化する。
・共産党と敵対しない限り、「心の平安」をもたらす宗教が広がっていく。
・環境問題は深刻化する。特に水不足、水質汚濁は危険水域に。
・世界最大の原発大国になる。
・13億人の食生活の質的変化により、新たな「飢え」に直面する可能性がある。