サブプライム危機は兆候である
サブプライム危機のもととなった根深い社会的・経済的な問題は解決されていない。投資家は政府が無リスクの存在だと考えるのを止め、政府にお金を貸す時は、以前より高い金利を要求するだろう。金利が上がった分、政府の債務はかさを増すことになる。ギリシャ、アイルランド、日本では、金利がほんの少し上がっただけで、国家予算がそっくり債務の金利支払いに費やされる事態に至ってしまう。
ギリシャは立ち直ることができるのか?
人口約1100万のギリシャに対し、IMFと欧州中央銀行は1450億ドルの貸付を行うことで合意した。しかし、長期的な予想は惨憺たるものである。
およそ4000億ドルという巨額の負債に加え、ギリシャ政府は8000億ドル以上の年金未払いを抱えていた。これはギリシャ有業者1人あたり25万ドルを超す借金となる。合計1兆2000億ドルの債務に対し、1450億ドルの救済措置では、焼け石に水である。しかし、これは表向きの数字で、以下の問題が発覚した。
・過去12年で公務員の給与は実質2倍に増加。これに賄賂は含まれない。
・政府職員の給与は民間の平均3倍
・公立校の生徒一人に対する教員の数はフィンランドの4倍
・政府で働くものは賄賂を受け取ることが常識
・毎年十億ドル単位の年金負債が、帳簿に記載されていない
・当初70億ユーロと想定されていた、財政赤字は300億ユーロ以上
・あらゆる自営業者が脱税している
・土地を登記する仕組みがなく、不動産の闇市場が形成されている
・脱税の露見は、税務官への賄賂で解決
ギリシャ経済の構造は集産主義的だが、国民性は逆行しつつある。自分のことしか考えない個人の集合体というのが国の実態である。投資家たちはこのシステムに数千億ドルをつぎ込んできた。そして、借入ブームがこの国の首を絞め、モラルの全面崩壊へと追いやってしまった。
たった今も世界経済は、ギリシャが債務不履行に陥るかどうかに戦々兢々としている。ギリシャが4000億ドルの負債を踏み倒し、貸し手であるヨーロッパの諸銀行も倒産に追い込まれ、他の財政危機国(スペイン・ポルトガル)がなし崩しに後を追うのは時間の問題ではないかと思える。
ギリシャに返済が可能かどうかは、この国の文化が変わるかどうかにかかっており、そのためには国民が自ら変わろうと努力する必要がある。たとえ債務を返済し、分相応の生活を送り、EU加盟国としての立場をふたたび安定させることが物理的に可能だとしても、ギリシャ人にそれだけの精神的な底力があるのか?
この国はばらばらの小さな粒子の集合体であり、一個一個の粒子が共有財産を食い潰してでも私利を追求することに慣れきっている。