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2012/04/01更新

インサイド・アップル

256分

1P

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アップルの仕事は宗教

アップルは、ビジネス界の大きな流れが「透明性」に向かっている時に、秘密主義である。社員は大きな権限を与えられるどころか、狭い責任範囲で仕事をしている。一般に優れたマネジャーは権限を委ねると教えられるが、アップルのCEOは、自社の広告をいちいち承認することから、極秘のオフサイト会合に誰を出席させるかの決定まで「細かい上司」であった。

ジョブズはナルシストだが、強迫型の資質も持っており、部下が自分と同じくらい細部にこだわり抜くことを求めた。物事を彼のやり方で進めることを要求し、彼の意思が反映されているかどうかを執拗に確認する態度は、アップルに強迫型の文化を作り出した。

アップルの文化はグーグルの対極である。アップルでは、みんな全力で仕事に打ち込んでいるから、帰宅してもアップルの事を忘れない。アップルでしている仕事が、その人にとっての真の宗教だと言う。

収入をあくまで追求しない組織

アップルでは機能ごとに組織のラインが作られており、製品群でまとめる構造をとっていない。この構造により、各幹部の権限は限られたものになる。

ジョブズの下では、収支管理を握る幹部はCFOだけである。他の職務を担当する幹部はそれぞれの強みに専念し、財務分析の類を押しつけられることもない。優れたデザインのアイデアを生み出すジョナサン・アイブは、おそらく財務のことを知らない。アイブがiPhoneのステンレススチールの外枠や、iPadの高性能のガラス画面にあくまでこだわったことは、予算を気にする財務担当者ではとても達成できない収益に結びついた。

ポスト・ジョブズの時代

アップルのやり方にはマイナス面もある。アップルが市場主導型の大きな組織を避けることができたのは、ジョブズがすべての決定をしていたからである。ジョブズがいなければ、総合管理がない風変わりな形態は不利に動き出すと推測される。

ジョブズ時代とポスト・ジョブズ時代の違いは、ジョブズが興味を持たなかった分野や、ジョブズ本人が弱みになっていた分野でいち早く現れるだろう。アップルに「一度に一つの大きなこと」の社風があるのは、伝説のCEOが「一度に一つの大きなこと」に没頭していたからに他ならない。アップルはマルチタスクの会社ではない。

アップルが直面する問題は、ジョブズの世界観がアップルの経営陣に充分に刷り込まれているかどうか、彼らがジョブズの威光を借りずに自ら事業を遂行できるかどうかである。

アップルはすぐにでも、ジョブズの喪失に対処しなければならないが、それに対処できず、十中八九、「とんでもなくすばらしい」企業ではなくなる。