これまでの米国を中心とした世界経済の中で行われてきた政策協調の歴史を見ながら、世界金融危機後の変化にどう対応していくべきかを説明している。
新興国が台頭する中で、G20が担うべき役割が期待されていた。しかし、中国の政治・国内問題が、国際的な政策協調を困難なものにしていると説く。中国の抱える問題、世界金融危機の再発防止に必要な課題など、これからの世界経済の舵取りに必要な大枠を提示している1冊。
■政策協調とは
政策協調とは、主権国家同士が共通の目標のために、自国の政策に何らかの調整を行うことである。共通の目標としては、一般的には、世界経済の均衡ある持続的な成長や国際通貨制度の安定といったことが掲げられる。政策協調が必要とされるのは、国際的な経済の相互依存のために、一国の政策の効果が国境を越えて他国に及ぶためである。
主権国家はインフレを悪化させない範囲で、自国の失業率を低くすることを目標として、マクロ政策を運営する。この時、大国同士で問題になるのが、為替レートと経常収支である。為替レートの変化は価格競争力を通じて、輸出入を増減させ、経常収支に影響を与える。経常収支の黒字は自国の総需要を増大させ、自国の所得と雇用を増大させる。
1973年に主要国通貨が、変動相場制に全面移行して以来、主要国間で、為替レートや経常収支について協調的行動をとる必要が生じた。
先進国の力が相対的に低下し、新興国が台頭する中で、両者を含むG20が「第一のフォーラム」として、政策協調の主役になることが期待された。
しかし、G20には、中国の政治体制や人民元の問題から来る限界があり、国際金融問題への迅速な対応は期待できない。
そこで、今後はIMFや世界銀行などの国際金融機関が重要となってくる。
著者 中林 伸一
1963年生まれ。IMF国際経済コンサルタント 大学卒業後、大蔵省入省。OECD日本政府代表部一等書記官、IMFアジア太平洋局審議役、東京大学公共政策大学院教授等を経て、2011年より現職。
週刊 ダイヤモンド 2012年 4/21号 [雑誌] 東京大学大学院経済学研究科教授 福田 慎一 |
日本経済新聞 同志社大学教授 鹿野 嘉昭 |
エコノミスト 2012年 3/6号 [雑誌] |
週刊 東洋経済 2012年 3/3号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 政策協調と対外不均衡 | p.3 | 41分 | |
第2章 世界金融危機と政策協調 | p.65 | 39分 | |
第3章 金融危機の防止と政策協調 | p.125 | 37分 | |
第4章 途上国・新興国経済と日本の成長戦略 | p.181 | 41分 | |
おわりに 日本は生き残れるか | p.243 | 5分 |
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