国際会計基準(IFRS)の特徴、問題点、今後の展望について、まとめられている。現行の日本の会計基準と相容れない部分が多いIFRSについて、数年にわたり議論が繰り返されてきた。それに伴い、多くの企業経営者や経理・財務担当者はこの問題に振り回されてきた。
今後、日本におけるIFRSはどうなるのか。
会計基準の動向を知る上で、わかりやすい1冊。
日本は、バランス・シートには資産を原価で、損益計算書に記載する収益は実現したものに限るという「原価・実現主義」に基づく従来の会計を行ってきた。これは「キャッシュー・フローの裏付けのある利益」「分配可能な、資本を毀損しない利益」「公平な課税の基礎としての企業所得」という点で健全である。
IFRSは、すべてを時価評価する事を志向しており、収支原則が働かないところで、財務諸表の操作が天井知らずになる恐れが高い。IFRSは、M&Aにより、企業の資産を解体して儲ける投資家に「会社の清算価値」を計算するものであり、「ものづくり」などをベースにした企業にむかない。
アメリカもIFRSの適用には慎重になっており、日本でもIFRSの強制適用は行われないだろう。
著者 田中 弘
1943年生まれ。神奈川大学経済学部教授 大学院博士課程を修了後、愛知学院大学商学部講師・助教授・教授を歴任。1993年より現職。 公認会計士2次試験委員、大蔵省保険経理フォローアップ研究会座長、郵政省保険経理研究会座長、金融監督庁保険業早期是正措置検討会委員、ロンドン大学(LSE)客員教授、などを歴任。 現在、英国国立ウェールズ大学経営大学院(東京校)教授、日本生命保険相互会社業務監視委員、ホッカンホールディングス独立委員会委員、神奈川大学中小企業経営経理研究所所長なども務めている。
週刊 ダイヤモンド 2012年 4/14号 [雑誌] |
週刊 東洋経済 2012年 4/21号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
第1章 台頭する「IFRS任意適用」論 | p.1 | 11分 | |
第2章 「IFRS物語」――これを知らずしてIFRSは語れない! | p.17 | 11分 | |
第3章 暴走するIFRS | p.33 | 9分 | |
第4章 なぜ世界中の会計基準を統一するのか | p.47 | 15分 | |
第5章 「原則主義」で会計ができるか?――限りなく多様化する会計実務 | p.69 | 16分 | |
第6章 こんな会計を信用できるか | p.93 | 16分 | |
第7章 IFRSは誰のためのものか――企業を「コモディティ」と見て「解体の儲けを狙う投資家」 | p.117 | 13分 | |
第8章 日本の国益と産業を左右するIFRS | p.137 | 11分 | |
第9章 IFRSは生き残れるか | p.153 | 9分 | |
第10章 「連単分離」は世界の常識 | p.167 | 12分 | |
第11章 「同等性評価」が世界を救う | p.185 | 11分 | |
第12章 日本はいかなる会計を目指すべきか――経営者の実態と社会通念に合った会計観を | p.201 | 15分 |
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