中国版twitterでフォロワー65万人を抱え、「中国で最も有名な日本人」と言われる著者が、北朝鮮の実態を紹介している。北京大学時代に会った北朝鮮留学生の話や中国北朝鮮国境で見聞きしたことなど、リアルな北朝鮮の実像に迫る。
■北朝鮮のスーパーエリート達からの伝言
北京大学で過ごした留学時代、周りには20人くらいの北朝鮮留学生がいた。彼らは金日成総合大学から派遣されてきたり、労働党幹部の子息であったり、北朝鮮のエリート中のエリート達であった。
北朝鮮が核実験を実施して、国際世論の対北朝鮮圧力が強まったり、中朝関係が緊張したりすると、彼らは急に姿を消すこともあった。
「国際関係にとって、真相がどこにあるか分かるのが国境だ。なぜ、国境が存在するのかを考えることだ。民族の数と国家の数が異なる理由を考えることだ。国境は主権国家という枠組みに縛られている人間が、暴力的な手法で、勝手に引いたものに過ぎない。国境で何が起こっているかを、しっかり理解すること。すべてはそこから始まる。」
一人の北朝鮮スーパーエリートから日本人である筆者への伝言だった。こうして、2009〜2011年にかけて1300キロ以上に及ぶ中朝国境に向かい、約300キロを踏破した。
■北朝鮮スーパーエリート達
北朝鮮スーパーエリート達は、政治的な理由で24時間、相互監視しながら留学生活を送る。トイレとシャワー時以外、どこに行くにも、半径1m以内で二人一緒に行動する。相手の話に耳を傾け、「政治的に失格」な発言をしていないか、相互にチェックし続ける。
彼らは中国にいるにも関わらず、外部との必要以上の接触を固く禁じられている。しかし、彼らは北朝鮮が国際社会からどのように見られているかを含め、外部のことを多く知っている。情報収集は、祖国のニュース、中国の人民日報、新華社通信、韓国メディアのニュースも見る。米ニューヨーク・タイムズ、英フィナンシャル・タイムズなどの報道も目を通す。
エリートだけでなく、一般国民の大多数も自分の置かれた状況を知っている。北朝鮮国内にも、多くの外国企業が進出しているし、華僑は数万に及ぶ。中国から密輸でDVDが輸入される。北朝鮮人は内外の状況を知らないのではなく、公共の場で議論できないのが現状である。
著者 加藤 嘉一
1984年生まれ。北京大学研究員 2003年に高校卒業後、国費留学生として北京大学に入学、同大学国際関係学院大学院修士課程を修了。英フィナンシャルタイムズ中国語版コラムニストや、中国中央電視台(CCTV)、香港フェニックステレビ、フジテレビ系「Mr.サンデー」などのコメンテーターも務める。 中国版ツイッター「新浪微博」のフォロワー数は約65万人で、「中国で最も有名な日本人」と言われる。2010年、中国の発展に寄与した人物に贈られる「時代騎士賞」を受賞。
エコノミスト 2012年 3/20号 [雑誌] |
日本経済新聞 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.3 | 7分 | |
序 章 北朝鮮スーパーエリート達の日常 | p.21 | 12分 | |
第一章 中朝国境の支配者 | p.41 | 40分 | |
第二章 中朝国境のアメリカ | p.105 | 15分 | |
第三章 脱北者の群れ | p.129 | 30分 | |
第四章 国境の少女と女医 | p.177 | 14分 | |
第五章 中国と北朝鮮の間にある感情 | p.199 | 20分 | |
終 章 習近平の北朝鮮政策 | p.231 | 10分 | |
あとがき | p.247 | 5分 |