開発途上国の食糧問題の解決を目指している『TABLE FOR TWO』を創設した著者が、事業の立ち上げから、どのように事業を展開してきたかを語っている。
マッキンゼーを経て、松竹に勤務した後、35歳で社会起業家に転身した著者の想いや苦労がわかる1冊。
■テーブル・フォー・ツー(TFT)とは
企業の社員食堂にカロリーを抑えたヘルシーメニューを加えてもらい、その代金のうちの20円が開発途上国の子供たちの給食一食分として寄付される。そのことで、貧困とメタボリック・シンドローム(メタボ)という2つの社会課題を同時に解決することを目指す。
これがTFTのコンセプトである。従来の社会貢献というのは、「持てる人から持たざる人への、善意に基づいた施し」という考え方で行われているものがほとんどであった。しかし、TFTは、寄付をする方が飽食ゆえに抱えるメタボという問題も一緒に解決してしまおうというものである。
寄付にあてる20円という金額にも無理がない。しかも、ランチの価格に含まれるので、新たに財布を開かなくて済む。「20円が開発途上国の給食一食分になる」と明確に示して、寄付する人に食糧問題にコミットしている意識を持ってもらう。
人を動かし、参加してもらうためには理念だけでなく、「やってみよう」と思わせる無理のないしくみが、生活の一部になっていることが必要である。
日本で20円というお金は、いつの間にかなくなっても「まあいいや」で済んでしまう金額である。しかし、世界にはお腹を空かせた子供がたくさんいて、20円あれば、ちゃんとした食事が一回食べられる。
世界には満足に食事ができない子供たちがいることは、なんとなく知っている。けれども、自分では助けてあげようもないから、ちょっと目をつぶっておこう。こういう気持ちを責めることはできない。
しかし、ちょっとしたアクションを起こすだけで、その問題を少しだけ解決できるしくみが用意されていたらどうか。誰の心の中にも「いいことをしたい」という気持ちはある。ただ、皆その方法がわからなかったり、素直に気持ちを出す事ができなかったりするだけだ。
社会起業家というのは、そういうしくみをつくる人である。新しい価値を生み出し、上がった利益を最適に配分する。
この社会には、人が喜んで、いいことをしたくなるしくみがまだまだ不足している。だから、社会起業にはやることがたくさんある。
「自分の考えたしくみで社会を考えられる」
社会起業の面白さはそこにある。
著者 小暮 真久
1972年生まれ。NPO法人TABLE FOR TWO International 理事兼事務局長 シュワブ財団(スイス)が表彰する「アジアを代表する社会起業家(2011年度)」5名の1人。 大学卒業後、オーストラリアのスインバン工科大で人工心臓の研究を行なう。1999年、同大学修士号取得後、マッキンゼー・アンド・カンパニー東京支社入社。ヘルスケア、メディア、小売流通、製造業など幅広い業界の組織改革・オペレーション改善・営業戦略などのプロジェクトに従事。同社米国ニュージャージー支社勤務を経て、2005年、松竹株式会社入社、事業開発を担当。 経済学者ジェフリー・サックスとの出会いに強い感銘を受け、その後、先進国の肥満と開発途上国の飢餓という2つの問題の同時解決を目指す日本発の社会貢献事業「TABLE FOR TWO」プロジェクトに参画。2007年NPO法人・TABLE FOR TWO Internationalを創設し、理事兼事務局長に就任。社会起業家として日本、アフリカ、米国を拠点に活動中。
帯 参議院議員 川口 順子 |
帯2 一橋大学大学院教授 石倉 洋子 |
帯3 タリーズコーヒーインターナショナル会長 松田 公太 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに 「ワクワクしながら働く」ということ | p.4 | 8分 | |
第一章 TFTのビジネスモデルと苦難の創業期 | p.27 | 18分 | |
第二章 戦略コンサルタントからNPOへの転身 | p.59 | 23分 | |
第三章 社会起業にビジネススキルをいかす | p.101 | 42分 | |
終章 「しくみ」と「想い」が大きなつながりをつくる | p.177 | 14分 | |
おわりに 小さなしくみで革命を起こす | p.202 | 6分 |
社会の諸問題を、事業により解決する人のこと。 代表的な人物として、2006年にノーベル賞を受賞…
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