人と人のつながりを活かした資金調達の仕組みを紹介。主に貧困層を対象とした少額融資『マイクロファイナンス』と個人間の貸付・出資『P2Pファイナンス(クラウドファンディング)』の仕組みや課題を説明している。
著者はカンボジアやベトナムのマイクロファイナンスへの投資を行うNPO法人の代表を務めている。そのため、マイクロファイナンスの現状がよくまとめられている。
■マイクロファイナンスとは
マイクロファイナンスとは、少額の金融サービスを意味する。主に開発途上国などで銀行融資などを受けられない貧困層の人々を対象としている。
マイクロファイナンスを行う組織は、マイクロファイナンス機関(MFI)と呼ばれ、NGOとして小規模な活動を行っているものから、営利企業として先進国の金融機関と同等の規模でサービスを提供しているものもある。
多くのMFIは、貧困削減と営利追求という2つの目標を掲げている。マイクロファイナンスは、高利貸に苦しめられていた人々に、はるかに低い金利で資金調達を行う機会を提供している。
資金調達の対価である資本コストは、以下3つに構成される。
①待つことの対価:お金が戻ってくるまでの機会費用
②リスクの対価:元本が返ってこない確率を受け入れる対価
③情報取得の対価:調査費など相手の事を知るために必要なコスト
人と人とのつながりはこのコストを下げる。途上国で拡がるマイクロファイナンスは深くて狭い人間関係を用いて、先進国で浸透しつつあるP2Pファイナンスやクラウドファンディングは浅く広い人間関係を用いて資本コストを下げ、より多くの人々に資金調達の機会をもたらした。
技術進歩とともに私たちの社会関係のあり方は変わり続け、将来にはその変化に合わせてさらに新しい金融の仕組みが生まれてくるだろう。そして、お金はこれまで以上に必要とされている人々のところに届くようになる。
著者 慎 泰俊
1981年生まれ。NPO法人Living in Peace 代表理事 モルガン・スタンレー・キャピタルを経て、現在はPEファンドの投資プロフェッショナルとして様々な事業の分析・投資実行・投資先の経営に関与。仕事の傍ら、2007年にNPOであるLiving in Peaceを設立し、カンボジアやベトナムなどで貧困層の金融へのアクセスを拡大するために日本初の「マイクロファイナンスファンド」を企画。
日本経済新聞 |
帯 ライフネット生命副社長 岩瀬 大輔 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.1 | 9分 | |
第1章 資本コストのフレームワークを理解する | p.25 | 9分 | |
第2章 金融の仕組みをフレームワークで考えてみる | p.38 | 17分 | |
第3章 マイクロファイナンスの仕組み | p.65 | 19分 | |
第4章 21世紀のマイクロファイナンスが抱える課題 | p.94 | 24分 | |
第5章 ITの進歩がもたらしたP2Pファイナンス | p.131 | 15分 | |
第6章 P2Pファイナンスの現場から | p.154 | 40分 | |
第7章 21世紀のファイナンスのグランドデザインを考える | p.215 | 18分 | |
第8章 21世紀の金融は世界をもっと自由なものにする | p.242 | 6分 | |
あとがき | p.251 | 3分 |
ピアツーピアの略。多数の端末間で通信を行う際のアーキテクチャの一つ。 対等の者(ピア)同士が通信を…
不特定多数の人から資金を集める行為のこと。 群衆(crowd)と資金調達(funding)を組…