グローバル化によってもたらされたのは、貧困、環境破壊、資源枯渇という社会・環境問題である。これからも人口が増え続ける世界において、必要なことは、持続可能な社会の創造であるとし、それを担うのが企業であると説く。
社会に課題がある=ニーズがあるとし、所得ピラミッドの底辺(BOP)を対象としたビジネスを創出せよと主張している。様々なBOPビジネスの事例を紹介しながら、これからの企業のあり方を論じています。
■持続的な社会の発展には技術革新が不可欠
地球上の人類がつくり出す「環境負荷」は以下の公式で表される。
環境負荷 = 人口 × 豊かさ(消費) × 技術
持続可能な社会の実現には、人類が地球環境への負荷を減らしていく必要がある。それには、人口を劇的に減らすか、豊かさのレベルを落とすか、富を生み出す技術を見直す必要がある。
しかし、人口を減らすことは政治的措置なくしては不可能である。豊かさのレベルを落とすこともありえない選択である。貧困と人口増加には相関関係がある。そして、貧困問題は富の再分配によっては解決できない。世界の大富豪700万人の総資産約25兆ドルを最も貧しい40億人に分けても、1人につき6000ドルを払うだけでなくなり、有効な対策と言えない。つまり、持続可能な発展は技術革新にかかっている。
■グローバル資本主義の岐路
およそ20年間にわたる経済のグローバル化、民営化、および貿易自由化は、あまりいい結果をもたらしていない。先進国の富裕層はますます豊かになったが、世界の大多数の国や人々はまだ資本主義と自由民主主義の恩恵を受けていない。世界の最貧国の経済は、1980年代初め以降、ゼロまたはマイナス成長である。
そして、先進国が情報・サービス集約的経済にシフトした反面、グローバルには、この50年間、天然資源や化石燃料の持続不可能な使用が急激に進み、自然環境に悪影響をもたらしている。地球の生命を維持する生態系機能、つまり淡水、海洋漁場、土壌、気候などの約60%が劣化、または持続的でない方法で使用されている。
この10年間、世界経済の中心的役割を担う多国籍企業(MNC)によって牽引された経済国際化の暗い側面を指摘する声が高まっている。例えば、MNC上位10社で、世界の最小最貧困国100国のGDPを合わせた以上の年間売上高があることから、政府の主権や国の運命を決定する能力に対する懸念が高まっている。
さらに、MNCは世界の経済活動の1/4を占めているにも関わらず、世界の労働人口の1%も活用していない。一方、働く意欲のある世界人口の1/3が失業者か不完全雇用者である。世界では、株主として金融市場に参加している人は、人口の1%に満たない。結果としてMNCによって創出された富は、専ら世界の比較的少数の富裕者、つまり会社重役、従業員、欧米の株主に集中している。
また、MNCの投資は、貧しい国の最富裕層や、中国、インドといった最も大きな潜在市場にほぼ限られる。ビジネスという点で経済ピラミッドの底辺にいる人々のニーズは、まったくと言っていいほど、無視されているのが現状である。その結果、この40年間、世界の最富裕層と最貧困層との差は広がり続けている。上位1/5の富裕層は世界GDPの85%を占め、下位1/5の貧困層は1.1%しか占めていない。
著者 スチュアート・L・ハート
持続可能な開発と環境保護に関するビジネス戦略研究の世界的権威 コーネル大学ジョンソンスクール、サミュエル・C・ジョンソンSustainable Global Enterprise寄附研究部門教授および経営学教授。ミシガン大学デビッドソン研究所およびオランダのティルブルフ大学の上級研究員でもある。 現職以前は、戦略経営学を教える傍ら、ノースカロライナ大学ケナンフラグラー・ビジネススクールにCSEを、ミシガン大学にCEMPを創設する。クライアント企業は、デュポン、ヒューレット・パッカード、プロクター&ギャンブル、シェルなど多岐にわたる。 ハーバード・ビジネス・レビュー誌の最優秀論文に贈られるマッキンゼー賞を受賞した1997年の「環境保護のむこうに:『持続可能性』のための経営戦略」で、持続可能な企業経営に向けた動きに先鞭をつける。さらに2002年にC・K・プラハラードと著した先達的な共同論文「ピラミッドの底辺に眠る富」で、開発途上地域の貧困層40億人のニーズに応え、同時に利益を上げるビジネスの可能性を最初に示す。
帯2 ハーバード・ビジネススクール教授 クレイトン・クリステンセン |
帯 元アメリカ合衆国副大統領 アル・ゴア |
帯3 マサチューセッツ工科大学教授 ピーター・センゲ |
帯4 グラミン銀行創業者 ムハマド・ユヌス |
帯5 ミシガン大学ロス経営大学院教授 C・K・プラハラード |
404 Blog Not Found 小飼 弾 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
プロローグ | p.12 | 11分 | |
第1章 企業責任からビジネスチャンスへ | p.28 | 25分 | |
第2章 不調和な世界 | p.60 | 25分 | |
第3章 持続的価値ポートフォリオ | p.92 | 25分 | |
第4章 創造的破壊と持続可能性 | p.126 | 23分 | |
第5章 下向きの大躍進 | p.156 | 26分 | |
第6章 ピラミッドの底辺を目指して | p.190 | 26分 | |
第7章 帯域幅の広い企業へ | p.226 | 22分 | |
第8章 ネイティブ力を身につける | p.254 | 28分 | |
第9章 持続可能なグローバル企業へ | p.290 | 25分 | |
エピローグ | p.322 | 5分 |
ベイス・オブ・ザ・ピラミッド(base of the pyramid) 世界の中で、所得が最も低い…
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