20世紀型経済の限界
国連環境計画(UNEP)が発表した報告書は、人間活動が原因の環境破壊による2008年の損害額は約6兆6000億ドル、世界のGDP総計の11%に上る。環境破壊は、今後の世界経済にとって大きなリスクになると警告され、その損害の1/3は、時価総額で世界のトップ3000の大企業に責任がある。
20世紀の経済は成長を実現した裏で、地球の生態系や環境に巨大な負担を強い、その損害を「外部化」し続けてきた。その負の影響が21世紀の経済成長自体を脅かすまでになっている。
グリーン経済最前線
いまや企業は「二酸化炭素の排出はコストである」という価値観への転換を迫られている。グリーン経済に向けて世界各国は以下のような状況にある。
・中国
2005年に中国国内の環境破壊によってもたらされた被害総額はGDPの10%に上る。2011年、中国はグリーン化を最も重要な国家戦略の一つとして位置づけた。今後、経済のグリーン化政策を積極的に推進した場合、中国のエネルギー消費量は2030年に現在の30%増のレベルで安定化するとされる。
・アメリカ
先進国でありながら、京都議定書への参加を拒否したアメリカだが、2007〜2011年の間にエネルギー使用起源の二酸化炭素の排出量は10%減少した。当初の減少は不況の影響だったが、背景には新たな4つトレンドがある。
①石炭火力発電への反対運動
②白熱電球の減少
③規制強化による車の燃費基準の向上
④再生可能エネルギーの急拡大
・韓国
1990〜2005年にかけて韓国の温室効果ガスの排出量は2倍に増えた。OECD加盟国の中で最も大きな伸び率で、中国と肩を並べる。水質汚染や大気汚染は深刻で、エネルギー依存コストも高い。2008年、韓国は「低炭素グリーン成長戦略」を打ち出し、グリーン経済に転換させることを宣言した。しかし、一方でダム開発、原発新設の計画も盛り込まれ、グリーン経済戦略が、国内的な議論がないまま、トップダウンで決められたものであることから反発も強い。
・デンマーク
第一次オイルショックの1973年当時、デンマークは化石燃料に100%依存していた。そこから、風力発電とバイオマス発電利用を進め、2007年には国内電力の内、再生可能エネルギーの比率は29.3%になる。風力エネルギー技術と関連事業はデンマークの最重要輸出産業となり、総輸出額の6.5%を占めるようになった。
・ルワンダ
ルワンダは、ごみ対策としてプラスチック製レジ袋を禁止している世界唯一の国である。スーパーや空港の土産物店で使われる袋は再生紙を利用したもの。政府は環境保全対策に力を入れ、天然資源を浪費しないグリーン経済の実現を国の政策の柱の一つにしている。その中心となるのが、エコツーリズムである。