「デザイン」とはいったい何なのか?
この問いに答えてくれる本。
日本を代表するデザイナーである原研哉氏が、デザインについて語っている。銀座松屋のリニューアル、長野五輪、無印良品など、自身が手がけたプロジェクトなどを紹介しながら、デザインの本質について考えさせる。
■デザインの歴史
19世紀の半ば、イギリスは産業革命によってもたらされた機械生産で活気づいていた。しかし、粗雑な機械製品はヨーロッパのデリケートな伝統文化に抵抗なく受け入れられるものではなかった。結果としてそれは、手仕事が育んできた文化やその背後にある感受性をむしろ顕在化させることになる。
つまり、生活環境を激変させる産業のメカニズムの中に潜む鈍感さや不成熟に対する美的な感受性の反発、これが「デザイン」という思想の発端になった。
20世紀初頭に芸術運動が起こり、結果としてドイツの地にバウハウスという形でデザインの概念は方向性を与えられる。その後、第二次世界大戦の戦渦を逃れて、モダンデザインの先駆者たちはヨーロッパからアメリカへ渡る。こうして、建築やプロダクトデザインの領域でアメリカが躍進していく。
アメリカのデザインは経済の発展を支えるマーケティングの一環として進化する。「経営資源としてのデザインの運用」である。消費への欲望は「新奇性」によって鼓舞されると見抜いた企業家たちは「スタイルチェンジ」という役回りでデザインを重用した。
新しいスタイルの登場は、既知の製品を旧式なものへと老化、変容させる。「今日あるものを明日古く見せる」という戦略は消費を動機づける目的で次々と計画され、デザインはその役割に応えて、次々と製品の外観を変転させていった。
一方、ヨーロッパのデザインは、ドイツとイタリアが引っ張っていった。ヨーロッパのデザインは、個々のデザイナーの独立性とともに、クラフトマンシップのなごりを感じる。こうした個人の才能と職人的品質を合わせ持つ優秀な製品は、「定評」を獲得し、「ブランド」という価値で社会認知されていった。
経済力が支配を強める20世紀後半の世界の中で、いずれの場合も「経済」を主な動力源として進展していった。デザインは「品質」「新奇性」「アイデンティティ」を提供するサービスとして働き始めた。
著者 原 研哉
1958年生まれ。グラフィックデザイナー 日本デザインセンター代表 武蔵野美術大学教授 「RE DESIGN」や「HAPTIC」など、独自の視点で企画した展覧会を通して日常や人間の諸感覚に潜むデザインの可能性を提起。長野五輪の開・閉会式プログラム、愛知万博公式ポスターをデザイン。 2002年より無印良品のアドバイザリーボードメンバー。東京ADC賞グランプリ、毎日デザイン賞、亀倉雄策賞、原弘賞、世界インダストリアルデザイン・ビエンナーレ大賞など内外で受賞多数。
帯 作家 原田 宗典 |
帯2 プロダクトデザイナー 深澤 直人 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 デザインとは何か | p.1 | 15分 | |
第2章 リ・デザイン――日常の21世紀 | p.27 | 20分 | |
第3章 情報の建築という考え方 | p.61 | 25分 | |
第4章 なにもないがすべてがある | p.103 | 13分 | |
第5章 欲望のエデュケーション | p.125 | 16分 | |
第6章 日本にいる私 | p.153 | 14分 | |
第7章 あったかもしれない万博 | p.177 | 14分 | |
第8章 デザインの領域を再配置する | p.201 | 14分 | |
あとがき | p.225 | 4分 |
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