ITの分野で注目される「ビッグデータ」の解説と多くの事例が掲載されている本。
■ビッグデータとは
「既存の一般的な技術では管理するのが困難な大量のデータ群」と定義される。管理が困難になる要因は、3V(Volume:量、Variety:多様性、Velocity:発生頻度、更新頻度)で表される。
広義では「3Vの面で管理が困難なデータ及び、それらを蓄積・処理・分析するための技術、さらに、それらのデータを分析し、有用な意味や洞察を引き出せる人材や組織を含む包括的な概念」と定義される。
■なぜ今ビッグデータなのか?
ビッグデータは新しい概念ではない。ゲノム解析や宇宙開発の分野でも、スーパーコンピュータを利用した膨大なデータの分析処理は行われてきた。しかし、従来とは違う要因によって、その活用が注目されている。
①ビッグデータの民主化
ビッグデータが、フェイスブックなど、日々の生活に密着した環境から生成されるようになった。
②ハードウェアの価格性能比の向上、ソフトウェア技術の進化
ディスク価格の下落、大量データを汎用品のサーバで高速に処理できるソフトウェア技術「ハドゥープ」の登場により、ビッグデータの蓄積・処理の敷居が低くなった。
③クラウドの普及
クラウドコンピューティングの台頭で、資金に乏しいベンチャーでもビッグデータの分析が可能になった。
■ビッグデータの活用パターン
①商品やサービスのレコメンデーション
アマゾン、ネットフリックス、楽天、リクルートなどのEC系サイトで数多く活用されている。
②行動ターゲティング広告
グーグルやヤフーなどのネットサービスでは当たり前に使われている。
③位置情報を利用したマーケティング
NTTドコモは東京海上日動火災保険と提携し、ユーザーがスキー場やゴルフ場に到着すると同時に、目的に合った保険案内のメールが届く「ドコモ ワンタイム保険」を提供している。
④不正検出
クレジットカードの膨大な利用履歴データを分析し、オンラインでの不正モニタリングに利用されている。
⑤顧客離反分析
会員制の商品、サービスを提供する企業は離反(退会)しそうな顧客を予測し、キャンペーンのオファーなどの業務を最適化している。
⑥故障予測
エラー情報、利用履歴、消耗品の劣化状態を収集し、故障やトラブルの予兆を検出する。富士ゼロックスの「TQMS-uni」が有名。
⑦異常検出
シスコシステムズでは、通信ネットワークの稼働状況を監視し、突発的な事象や故障などをリアルタイムに検出し、機器の組み合わせなどの安定性を評価している。
⑧サービスの改善
セールスフォースやグーグルアップスでは、ソフトウェアの使用データを収集し、使われていない機能を次のバージョンアップで削るといった最適化を行っている。
⑨渋滞予測
自動車メーカーはカーナビ会員の走行データから生成した、位置や車速などの情報を用いて、渋滞予測などの道路交通情報を提供している。
⑩風邪の流行予測
エスエス製薬では、ツイッター上の風邪に関するツイートの増減と気温や湿度などの天気情報との関連性を分析し、風邪の流行を予測するウェブサイト「カゼミル+」を公開している。
著者 城田 真琴
野村総合研究所イノベーション開発部 上級研究員 大学卒業後、大手メーカーのシステムコンサルティング部門を経て、2001年より現職。現在、ITアナリストとして、先端テクノロジーの動向調査、ベンダー戦略の分析、国内外企業のIT利活用調査を推進。同時にそれらを基にしたITの将来予測とベンダー、ユーザー双方に対する提言を行っている。専門領域は、クラウド、ビジネス・アナリティクス、M2M、IoTなど。 著書に、ベストセラーとなった『クラウドの衝撃』(東洋経済新報社)、『今さら聞けないクラウドの常識・非常識』(洋泉社)、共著に『ITロードマップ 2012年版』(東洋経済新報社)などがある。NHK「ITホワイトボックス」、テレビ東京「ワールドビジネスサテライト」などのテレビ出演、講演、新聞・雑誌・Webへの寄稿多数。総務省「スマート・クラウド研究会」技術WG委員(2009~2010年)。
エコノミスト 2012年 7/24号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2012年 7/21号 [雑誌] |
週刊 東洋経済 2012年 8/18号 [雑誌] |
日本経済新聞 日本リサーチ総合研究所主任研究員 藤原 裕之 |
エコノミスト 2012年 8/28号 [雑誌] ITジャーナリスト 三好 豊 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
日経ビジネス |
デジタルマーケターが読むべき100冊+α リクルートテクノロジーズ 執行役員CTO 米谷 修 |
デジタルマーケターが読むべき100冊+α 2回目 デジタルインテリジェンス代表取締役 横山 隆治 |
デジタルマーケターが読むべき100冊+α 3回目 フリーライター 野本 纏花 |
日本経済新聞 2回目 国立情報学研究所教授 佐藤 一郎 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 6分 | |
第1章 ビッグデータとは何か | p.19 | 21分 | |
第2章 ビッグデータを支える技術 | p.47 | 27分 | |
第3章 ビッグデータを武器にする企業 欧米企業編 | p.83 | 26分 | |
第4章 ビッグデータを武器にする企業 国内企業編 | p.117 | 26分 | |
第5章 ビッグデータの活用パターン | p.151 | 23分 | |
第6章 ビッグデータ時代のプライバシー | p.181 | 33分 | |
第7章 オープンデータ時代の幕開けとデータマーケットプレイスの勃興 | p.225 | 24分 | |
第8章 ビッグデータ時代への備え | p.257 | 34分 |
通常のデータベース管理ツールなどで取り扱う事が困難なほど、巨大な大きさのデータの集まりのこと。 …
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