今後数十年間で、世界のGDP成長率の少なくとも2/3を、貧困国が占めるようになる。新興国におけるイノベーションこそが、今後の企業の生き残りを左右すると説く。多国籍企業のエグゼクティブが絶賛する1冊。
■リバース・イノベーションは途上国で生まれる
イノベーションは一般的に、富裕国で始まり、その後で途上国に向かって川下へ流れていく。しかし、途上国で最初に採用されたイノベーションが、重力に逆らって川上へと逆流していくことがある。これを「リバース・イノベーション」という。
歴史的に見ると、リバース・イノベーションは珍しい。従って、途上国ではイノベーションなど必要ない。懐に余裕ができたら、富裕国から欲しいものをただ輸入すればよいと考えがちである。
こうした前提に立つと、富裕国の顧客層向けに開発されたグローバル製品にわずかな修正を加え、主に機能を落とした低価格モデルを輸出する戦略「グローカリゼーション」だけで、新興国市場を開拓できると考える。
しかし、それは完全な誤りである。富裕国で有効なものが自動的に、顧客ニーズが全く異なる新興市場でも幅広く受け入れられるわけではない。リバース・イノベーションは発明からではなく、忘れることから始まる。富裕層国でうまくいった支配的論理を手放さなくてはならない。
■リバース・イノベーション戦略の「9つの需要ポイント」
①新興国市場の成長をつかむために、単なる輸出ではなく、イノベーションに取り組まなければならない。
②機会を利用して、新興国市場のイノベーションを他の貧困国、富裕国の取り残された市場、そして最終的に富裕国の主流市場へと移転させる。
③いわゆる新興国の巨人を自社のレーダーで捕捉し続ける。これらの企業は途上国を本拠とし、小さいが急成長を遂げており、いつか既存の多国籍企業を脅かす存在になるというグローバルな野心を持っている。
④人材・権限・資金を、成長している場所である途上国に移す。
⑤リバース・イノベーションのマインドセットを全社的に培う。海外駐在の任務、集中訓練の経験、新興国市場で開催される企業のイベント、創造的な経営陣の登用、はっきり目に見えるCEOの行動を通して、新興国市場にスポットライトを当てる。
⑥途上国ではグローバルとは別の独自の損益計算書をつくり、成長性に関する指標を重視した業績評価を別途設ける。
⑦リバース・イノベーションの機会ごとに最大限のビジネス能力を発揮できるように、ローカル・グロース・チーム(LGT)に権限を移譲する。LGTは創設されたばかりの企業ように振る舞わなければならない。
⑧注意深く管理された協力関係を通して、LGTが自社のグローバルな経営資源の基盤を活用できるようにする。
⑨迅速かつ経済的に、重要な未知の事柄の解明に注力し、リバース・イノベーションの取り組みを統制のとれた実験として管理する。
著者 クリス・トリンブル
ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネス教師 ダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスでMBAを取得。若いころアメリカ海軍で潜水艇将校を務めていた時、大規模組織内のイノベーションに興味を持つ。現在はダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスで教鞭をとる 。
著者 ビジャイ・ゴビンダラジャンダートマス大学タック・スクール・オブ・ビジネスのアール C. ドーム1924教授 世界有数の戦略とイノベーションの専門家の一人。ゼネラル・エレクトリックで初の招聘教授兼チーフ・イノベーション・コンサルタントを務めた。フォーチュン500社の25%以上の企業をコンサルティングし、2011年には、世界に最も影響力を与えたビジネス思想の権威50人を選出する「Thinkers50」の第3位に入っている。
帯 GE会長兼CEO ジェフリー・イメルト |
帯9 シカモア・ネットワークス共同創設者兼会長 グルラジ・デシュパンデ |
帯10 ベイン・キャピタル マネジメント・ディレクター スティーヴ・パグリュカ |
帯6 シスコシステムズ会長兼CEO ジョン・チェンバース |
帯3 P&G会長兼社長兼CEO ロバート・マクドナルド |
週刊 ダイヤモンド 2012年 11/3号 [雑誌] 八重洲ブックセンター販売課 柏 明美 |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2012年 12月号 [雑誌] |
日本経済新聞 2回目 専修大学教授 西岡 幸一 |
帯2 スタンフォード大学経営大学院 組織行動学教授 ジェフリー・フェファー |
帯4 インフォシス名誉会長 NR.ナラヤナ・ムルティ |
帯7 メドトロニック会長兼CEO オマール・イシュラク |
帯5 南カリフォルニア大学教授 ウォレン・ベニス |
帯8 リライアンス・インタストリーズ会長兼CEO ムケシュ・アンバニ |
私をリーダーに導いた250冊 自分を変える読書 ナブテスコ 代表取締役社長 小谷 和朗 |
TOPPOINT |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 未来は自国から遠く離れた所にある | p.3 | 13分 | |
第2章 リバース・イノベーションの5つの道 | p.21 | 22分 | |
第3章 マインドセットを転換する | p.51 | 24分 | |
第4章 マネジメント・モデルを変えよ | p.83 | 32分 | |
第5章 中国で小さな敵に翻弄されたロジテック | p.129 | 13分 | |
第6章 P&Gらしからぬ方法で新興国市場を攻略する | p.147 | 16分 | |
第7章 EMCのリバース・イノベーター育成戦略 | p.169 | 15分 | |
第8章 ディアのプライドを捨てた雪辱戦 | p.189 | 21分 | |
第9章 ハーマンが挑んだ技術重視の企業文化の壁 | p.217 | 22分 | |
第10章 インドで生まれて世界に広がったGEヘルスケアの携帯型心電計 | p.247 | 22分 | |
第11章 新製品提案の固定観念を変えたペプシコ | p.277 | 19分 | |
第12章 先進国に一石を投じるパートナーズ・イン・ヘルスの医療モデル | p.303 | 19分 | |
終章 必要なのは行動すること | p.329 | 10分 | |
付録A リバース・イノベーションの実践ツール | p.341 | 13分 | |
付録B ネクスト・プラクティスを求めて | p.358 | 7分 |
現地化すること。 企業が製品やサービスなどを海外で販売する場合、国ごとの文化や風習を考慮して、その…
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