「料理の鉄人」として活躍した料理人の陳建一氏が、仕事の心構えや料理哲学を語っている。陳建一氏が経営する「赤坂四川飯店」で受け継がれている流儀は「どんな時でも手間を惜しまず、手作りで料理を作る」こと。
そのためには、段取りよく料理を行い、お客様にベストな状態で料理を提供することが大事であるとしている。陳氏の料理に対する心意気がわかる1冊。
■段取りは仕事の基本
料理人の世界では「段取り」はすべてのベースになっている。料理をしようと思ったら、段取りが組めないと致命的である。特に中華料理では、料理の完成から提供するまでのタイミングが重要になってくる。炒め物は出来たてが一番だから、すみやかに提供する必要がある。また、油を使う料理が多いので、冷めてくると、具に絡んでいたタレがギトギトになってしまう。
どんな職種、どんな業界にせよ、仕事をすることの基本にはすべて「段取り」がある。
■何でもメモする習慣をつける
料理のイベント実施は、半年前から三ヶ月前ぐらいに決定する。そうするとかなり長期的にスケジュールを組み立てて、それを把握しておく必要がある。そのため、手帳や表を使ってチェックする習慣をつけている。足りないものはないか、確認を忘れていることはないか、前もって用意するものは手配してあるか。とにかく考える必要があることをどんどん書いて、着々と準備を進めていく。実際のイベントが始まるずいぶん前から、実は細かい段取りは始まっている。
■予想外の出来事には、気持ちを瞬時に切り替える
お客様に料理を提供するイベントの場合、普段の厨房とは火力が違うことがあるので、どのような料理をどうやって作るか、そのたびに段取りを変える必要がある。あるイベントでは、料理を作るレストランが広東料理のお店だったので、火力が強いジェットバーナーしか設置されていなかった。広東料理と四川料理では使う火力が全然違う。
どんなに事前にチェックし、用意を万端にしていても、想定外のことは起こる。大切なのは、すぐに気持ちを切り替えて、瞬時に段取りを変更し、臨機応変に素早い対応をしていくこと。予想外のハプニングは人を成長させる。
■備えを作っておく
イベントなどでは、保険を作っておくことも大切だ。350人分作っても、配膳の途中やお客様が料理を落とすなどして足りなくなってしまう場合がある。そうした事態に備えて、いつも宴会では数人分ほど余分に作るようにしている。「ここに予備の料理があるから、もし問題があったら取りにおいで」ということも、ホールのスタッフたちに伝えておく。備えを作っておけば、調理場もホールもいざという時に慌てることなく対応できる。
■自分の身になって考える
注文した担々麺がすぐに出てきても、お箸が出ていなければ食べられないことは、自分が食べる側になったらすぐにわかること。「当たり前のことだ」と思うかもしれないが、そんな簡単なことを意外と思いつけなかったりする。「何が必要か?」と、自分の身になって段取りを考えることで、本当に準備しなければならないことが浮かび上がってくる。
著者 陳 建一
1956年生まれ。料理人、民権企業株式会社代表取締役社長 父は日本に四川料理を伝えた料理人・陳建民。大学卒業後、父の経営する赤坂四川飯店で修業を始める。1990年に父の後を継ぎ、民権企業株式会社(四川飯店グループ)社長に就任。 1993年から6年間、テレビ番組『料理の鉄人』に「中華の鉄人」として出演。6年間で、92回の戦いを重ねた。成績は67勝22敗3引分け。また「17連勝」という、鉄人史上最長の連勝記録を誇る。 2008年「現代の名工」受賞。2011年日本中華料理協会の会長に就任
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊 ダイヤモンド 2012年 9/22号 [雑誌] 三省堂書店営業本部課長 鈴木 昌之 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 5分 | |
第1章 大きなプロジェクトでこそ、段取りが磨かれる | p.17 | 26分 | |
第2章 日々成長していくための段取り | p.63 | 29分 | |
第3章 一流のサービスは、こうして作る | p.113 | 18分 | |
第4章 プロを育てる段取り | p.145 | 26分 | |
第5章 段取り上手な組織を作る | p.191 | 15分 | |
第6章 自分らしい生き方のための段取り | p.217 | 12分 |