どういうコミュニケーションを取れば良いかを考える
料理というのは決まった手順を踏めば、誰でも同じようなものを作ることができる。しかし、料理人に求められることは、いかに「すべて良い状態で」お客様に提供するかということ。イベントでは、そこをゴール地点にして逆算し、どういう料理を作り、どういうコミュニケーションをとっていけば良いのかを考えている。
ホールスタッフとの連携を確認しておくことは、ベストな状態で料理を出すためには欠かせない。加えて要求されるのがアイコンタクト。パッと言ったことや雰囲気で、状況を互いに察する力が重要になってくる。だからこそ綿密な段取りが必要になる。
現場を見る
一番大事なのは現場だ。現場を知らずして指示が出せる訳がない。お客様のいるテーブルで何が起きているのか、その状況を素早く把握し、次の行動を決定する。これは日頃の営業から良いタイミングで行動を起こしていけば、そのお店は自然と繁盛店になっていく。
料理人も厨房にこもって料理を作っているだけでなく、手隙の間を見計らって宴会場を見に行き、様々なことを肌で感じるべきだ。「これはこういうものだ」という机上の空論だけでは、本当の段取りを組むことは絶対にできない。
瞬時に考える
段取りを身に付けるには「考える」こと。長い経験から身に付く段取りもあるが、それより早く習得するには、考えることが欠かせない。例えば、エビチリを4人前作るのは、その場で対応できるかもしれないが、300人前と言われるとすぐには作れない。そういう時は、事前にエビをすべて茹でておくという段取りが必要となる。
この「考える」というのは、机に向かって「うーん」と考えるのではなく、一瞬で考える。現状でできる最善を尽くすために瞬時にその場に適応する。その瞬時の対応は、経験に基づく。失敗を繰り返すことで、学習することができる。
相手のことを考える
『料理の鉄人』では、料理を作っている間、司会や審査員の方が雑談しているのが聞こえている。例えば「辛いのが苦手なの」という審査員がいれば、必ず辛さを抑えめにして料理を出していた。しょっぱいものが好きな人のスープには、塩を少し多めに振ったりということもあった。少し食べにくい料理を女優さんに出す場合には、包丁であらかじめ切れ目を入れておくこともした。
料理人は料理の技術を磨くだけでなく、その先の食べる人のことを考えられるようになる必要がある。例え自分がしなければならない工程が増えたとしても、それに見合った段取りを考えるべきである。