人気ブログ「金融日記」を運営する外資系投資銀行のトレーダーの著者が、外資系投資銀行の生々しい実態や、世界金融危機以降の悩ましい現実を紹介。
高額な年収をもらって働く人たちがどういった仕事をしているのか、金融危機以降、激変する金融業界の今がわかる1冊。
■金融ほど素敵なビジネスはない
銀行というのは、預金や、金融市場で短期の資金を借りて、企業などに長期の資金を貸し出して、その長短の金利差で儲ける、というのが基本的なビジネスモデルである。ところが、日本では不景気が続き、企業がお金を借りて新しい事業に投資しなくなった。そして、お金を貸してくれと言ってくる企業は、資金繰りに困った潰れそうな会社ばかりになってしまった。その結果、日本の銀行はお金の貸し出し先がなくなり、日本国債をせっせと買い込むようになっていった。最近の日本の銀行は、年寄りから集めた預金で日本国債を買うという簡単なお仕事をしているのである。
日本の銀行が簡単なお仕事をしている時、世界の銀行は金融工学を駆使して、もっと高級なビジネスをしていた。預金を集めて、その金を中小企業に貸し出すなんてしょぼいビジネスはやめて、借りてきた金で世界のマーケットで博打を打っていた。
■外資系投資銀行の内部構造
投資銀行とは、基本的に証券会社のことである。証券会社というとただの株屋みたいでしょぼいので、学生や顧客に凄そうに思われるために「投資銀行」と言っている。証券会社は市民から預金を集めてもいないし、多くの企業に金を貸している訳でもないので、銀行に課せられた厳しい規制などなく、総じて自由に商売ができた。
・トレーダー
投資銀行の中で会社の金(資本金+レバレッジ)でリスクを取っている人たちをプロップ・トレーダーという。客の注文をそのまま市場で執行するだけの人をエージェンシー・トレーダーという。前者の年収は3000万円〜3億円ぐらい、後者の年収は2000万円程度である。
・セールス部隊
株などのセールス部隊の仕事は、社内のアナリストが書いたレポートを要約して、クライアントの機関投資家に毎朝電話するだけの誰でもできる簡単な仕事である。機関投資家のファンドマネジャーも、むさ苦しいおっさんから毎朝電話がかかってきたらうざいだけだ。そこで、セールス部隊は顔がいい女子大生を多数雇って、毎朝、客に電話させ、夜は酒を飲みながら接待させることにした。外資系投資銀行のセールス部隊というのは、少数のマーケットのことを知っているシニアのおっさんセールスと、若くて可愛いけどおつむのちょっとばかり弱い20代の素人ホステスという混成チームになっている。給料はせいぜい2000万円とかそんなもの。
・ミドル・バック
証券会社では、フロントオフィス、ミドルオフィス、バックオフィスというように、社員の身分を分けている。江戸時代の士農工商、あるいはカースト制度と思ってよい。外資系金融機関で一番悲惨な人たちがミドルオフィス。ITやクオンツ、法務の専門家たちだが、トレーダーやセールスの奴隷である。
・人事部
外資系の人事部は人事に関して全く権限はない。しかし、単に事務処理をするだけの簡単なお仕事ではない。彼らは「死刑執行人」としての、極めて重要な秘密の任務を担っている。
外資系投資銀行では、トレーダーやセールスはある日突然クビになる。日本ではこうしたクビ切りは違法である。こうした社員に会社が訴えられるとまずいことになる。だから、人事部はクビになった社員に自分から辞めてもらうように、あの手この手で説得するのである。割増し退職金やありもしない不正行為のでっち上げで脅すこともある。外資系の人事の人事考課は何人を自主退社にスムースに追い込んだかで評価されていて、裁判を起こされる頻度が高いと自分がクビになってしまう。
著者 藤沢 数希
外資系投資銀行トレーダー 欧米の研究機関にて、理論物理学の分野で博士号を取得。 科学者として多数の学術論文を発表した。 その後、外資系投資銀行に転身し、マーケットの定量分析、トレーディングなどに従事。
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ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
THE 21 (ざ・にじゅういち) 2012年 12月号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 大きすぎてつぶせない | p.1 | 20分 | |
第2章 金が天から降ってきた | p.29 | 31分 | |
第3章 金融ほどすてきなビジネスはない | p.73 | 21分 | |
第4章 サル山の名前は外資系投資銀行 | p.103 | 33分 | |
第5章 ヨーロッパとアメリカの失われる10年+ | p.149 | 27分 | |
第6章 金融コングロマリットの終焉 | p.187 | 27分 | |
あとがき ──大企業から個人の時代へ | p.225 | 5分 |
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