今読むべき優良ビジネス書が
すぐ見つかり、読んだ本を
しっかり自分の知識にするサイト

本を検索する

カテゴリーから探す

人気のタグ

お知らせ


Android無料アプリ配信中
2012/11/27更新

政権交代 - 民主党政権とは何であったのか (中公新書)

182分

4P

  • 古典的
  • トレンドの
  • 売れ筋の
  • すぐ使える
  • 学術系
  • 感動する
  • ひらめきを助ける
  • 事例が豊富な
アマゾン詳細ページへ

そもそも2009年の政権交代とは一体、何だったのか

2009年衆院選によって生じた政権交代は、有権者が望んだ政治をもたらした訳でも、民主党が掲げたマニフェストを実現した訳でもない。マニフェストに掲げた政権政策は実施されていないものが多く、実施されていても効果が上がっていないものが少なくない。

我々は「選挙の際に候補者が提示した公約の中で、有権者が自分の考えに近いものを選び、投票を決定する」ことで、「自分たちの事を自分たちで決定する」代議制民主主義が機能すると想定している。しかし、それは本当に機能しているのか。その検証結果は次の通り。

①有権者は自分の考えに近い公約を提示する候補者に投票しているか?
2009年衆院選に立候補した候補者の選挙公約を分析した結果、ほとんどの選挙公約は候補者の得票率や当落に影響をもたらしていない。他方、どの政党に所属しているのかは選挙結果を決める重要な要因となっている。つまり、有権者は各候補者が主張した選挙公約を比較検討して投票を決めていない。

②選出された政治家は国会でその公約通りの活動をしているのか?
2005年衆院選の選挙公約が2009年までの国会活動と一致しているかを見ると、全体的に、与党であった自民党や公明党の政治家は選挙公約と当選後の国会活動の一致度が高く、民主党の政治家は一致度が低い。

③有権者は政治家や内閣の業績評価に基づいて投票活動を行っているか?
2009年衆院選の得票率を左右した要因を分析した結果、所属政党が強い影響力を持っていることがわかる。つまり、民主党であることが高い得票率をもたらしている。そして、選挙公約と国会活動の一致度については、選挙結果に有意な関連を示していない。

要するに、選挙の告示期間が極めて短期間であること、また、候補者から有権者に対する情報提供が、候補者の経歴や所属政党については伝わっても、どのような国会活動をしてきたのか、あるいは前回の選挙でどのような約束をし、それを守ったのか、という肝心の情報が伝わっていない事が、日本における代議制民主主義の機能を損ねている。

2009年衆院選の民主党圧勝の原因は、それまで政権を担ってきた自民党に対する有権者の懲罰投票とみることができる。特に、前の一年間の麻生内閣に対して有権者は厳しい評価をしていた。その原因の一つは、小泉内閣以来の新自由主義的改革がもたらした地域格差や個人差の拡大にある。特に、将来の生活不安が衆院選の投票活動に結びついている。

日本では選挙を通じて有権者の民意が政治家に十分に負託されているとは言えない。よって、小選挙区制により多数派の民意を議会に反映させる現在の仕組みから、比例代表制により選挙時の民意をそのまま議会に反映させる仕組みを基盤とした民主主義の導入を検討する必要がある。