厚生年金という名の増税
2012年8月、社会保障と税の一体改革関連法案が可決・成立した。この中には、非正規雇用労働者の厚生年金加入基準の緩和も含まれており、とりあえず45万人ほどが厚生年金に新規加入できる見通しだ。
「このままでは、彼ら非正規雇用労働者は、将来、月6万円程度の基礎年金しか受け取れない。だから、厚生年金に加入させてやり、より手厚い年金を保証してあげましょう」というロジックだ。
但し、世の中にタダ飯はない。仮に、月収20万円のフリーターがいたとしよう。彼は、現在月1万6000円ほどの国民年金保険料を払っているが、厚生年金に加入させられると、年金や税金などで約3万円強を「天引き」され、手取りは17万円以下になる。しかも、天引き額は今後さらに上がる事が決まっている。
厚生年金の保険料は、半分を会社が負担するというのもカムフラージュに過ぎない。企業はすべての経費をコミコミで人件費として想定しているので、その分の人件費を減らすだけである。つまり、「フリーターからも2割天引きしますよ、国民年金の未納なんて許しませんから」というのが、今回の改正の真意なのだ。
それで老後の生活が安泰になるなら、それでも構わない。しかし、現実には景気低迷による年金積立金の運用利回りや賃金水準の低下により、多くの専門家が、今後20年前後での年金制度の破綻を予想している。フリーターからかき集められた年金保険料は、こういった現状に応急措置するためにのみ使われ、それで潤うのは老人や一部の厚生官僚だけだろう。
「積み立て方式」に移行せよ
加入者を増やす前に、まずは世代間格差を生まずに持続可能で透明な年金制度をつくるのが先だ。それには現在の賦課方式から事前積み立て方式に切り替えた上で、各種年金の一元化も必要だろう。
積み立て方式へは、簡単に移行できる。現在、積み立て不足として年金債務が800兆円あると試算されている。この年金債務を「年金清算事業団」みたいなものをつくって切り離してしまうのだ。こうすれば、将来の年金債務はこれ以上増える事はない。これから払う年金の掛け金は、新年金制度として、すべて「積み立て方式」に移行し、毎月積み立てていくのだ。
既に年金を給付している高齢者や、これまで旧年金制度で掛け金を払ってきた現役世代は、年金清算事業団から給付していけばいい。年金特別債のような債券を発行して資金を調達し、そのお金で支払えば解決する。新年金制度として積み立てるお金を年金特別債で運用すればよい。そして、800兆円の年金債務は、毎年、消費税2〜3%程度入れて、債務を徐々に圧縮していく。これなら年金の信頼度は格段に上がるはずだ。