池上彰氏が語る「教養とは何か、学ぶとはどういうことか」。
池上氏自身の学ぶ動機や勉強法、読書などが語られており、教養を身に付けることの大切さを改めて振り返る。
東京工業大学で一般教養を教えるようになった池上氏が、学生にどういった想いで授業を行っているかなどがわかります。
■大学で身につけたいこと
「大学で何を学ぶか」と、もし聞かれたら、次の2つを答える。
①批判力を持つ(批判的に見る力を持つ)
人間関係ですべてを疑っていると友人をなくすが、少なくとも読書や学問の世界においては、とりあえずすべてを疑ってみることが大事である。研究者を目指すならなおさら、批判力を身に付けなければならない。
批判力を身に付けるのに大切なのは、何についても「引っかかるところを見つける」こと。本も。引っかかりを見つけるつもりで読むと、時々「あれ?」ということに出合う。
②自ら学ぶ力
研究者になるなら、独自の考え方なり、発想なり、発見が必要です。そういうものは、自分で一所懸命考え、学ぶ力があってはじめて得られる。また、研究の道に進まなくても、自分から学ぶ力をつけることが、社会に出てからも、ずっと勉強を続けることができる。
■学ぶための技術
・ノートのとり方
B5サイズの大学ノートを見開きにして、2ページを一面と考えて使う。講義では、左側にメモをとり、右側は空けておく。それを見ながら、その日のうちに、今度は右側に「ここの部分はこういう意味だよね」と補ったり、「先生は何を言いたかったんだろうか?」などの疑問とそれに対する自分なりの答えを書いてみる。左側が単語の羅列なのに対して、右側はそれに筋道をつけて、単語と単語の関係を論理化して短い文章にしていく。そうすると、講義全体の内容も再現できる。
・検索だけに頼らない
検索能力は必要な能力だが、あるキーワードで検索して引っ張ってきたものと、別のキーワードで引っ張ってきたものを重ねることによって新しい発想を生み出す。そこまでできないと、あまり意味がない。そのためには、引っ張ってくるべき内容を大量に蓄積していなければならない。これが現代の教養の一つである。
・一般化してみる
単に知識を集めるだけでなく、「要するにそれはどういうことなのだろうか」「ここから導き出されることは何なのか」ということを一つ一つ考えるようにしていると、ある点でAとBは共通している、ということが見つけられる。
さらに、何かを学ぶ時、単に「事実としてこんなことがありました」だけで済まさない、そこから何が言えるのか考えてみる。
・紙の新聞を読む
ネットでニュースをチェックしているから十分、という考え方がある。しかし、ネットだと興味のある記事だけクリックして、読んでいく。自分の知りたいことだけ知ることができるが、結果として、関心のあることには詳しいけれども、それ以外には全然興味を持たなかったり、知らなかったりということになる。
紙の新聞なら、自分の関心以外の記事も自然に目に入ってくることで、知識や関心が広がっていく。
著者 池上 彰
1950年生まれ。ジャーナリスト 記者やキャスターなどを歴任したNHK退職後はフリーランスとして活動し、各種メディアに出演している。日本ニュース時事能力検定協会理事。信州大学特任教授。「毎日新聞」『開かれた新聞』委員会委員。2012年より東京工業大学リベラルアーツセンター教授。
マインドマップ的読書感想文 smooth |
日経ビジネス |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 3分 | |
第1章 学ぶことは楽しい | p.13 | 12分 | |
第2章 大学で教えることになった | p.39 | 28分 | |
第3章 身につけたい力 | p.99 | 21分 | |
第4章 読書の楽しさ | p.143 | 13分 | |
第5章 学ぶことは生きること | p.171 | 6分 | |
おわりに | p.183 | 1分 |
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