読売新聞の一面コラム「編集手帳」を10年以上執筆し続けてきた著者が、その文章術を紹介している。
458文字という字数制限の中で、いかに読み手の心をとらえる文章を書くのか。
著者が目指す理想のコラム、文章を書くにあたって心掛けている事など、普段、ものを書くために参考となる内容が満載の1冊。
書籍の文章自体もユーモアに溢れており、読みやすくなっている。
■わがコラムの理想型
「編集手帳」に限らず新聞の一面コラムには見出しがない。他の記事ならば読者は、読むか、読まないかを見出しで判断する事ができる。何の話題を取り上げているのか、読んでみない事には見当のつかないのが一面コラムである。裏を返せば「まあ読んでみて下さい、絶対に損はさせませんから」という欄である。
コラムの理想型は次の通りと考える。
・書き出し
本題と直接関係がなく、多くの人が興味を覚える雑学知識をもって最善とする。本題に関係していても、内容が面白ければ次善の策として認める。小説の一節、詩歌、小咄、ダジャレ等の言葉あそび、著名人のエピソードなど、無理なく本題につながっていきさえすれば領域は問わない。キーワードは「魅力」。
・本題
本題の概要を紹介する。事件はどんな経緯をたどったか。何が問題だったか。「・・・べきである」「・・・ねばならぬ」など主張したい事があれば、ここで述べておき、締めくくりに持ち越さない。キーワードは「簡潔」。
・締めくくり
本題はあまり意識しなくてよい。本題から離れても構わない。笑いを誘うもよし。涙を誘うもよし。ホッと息をつけるような、あるいはしみじみするような、読者を本題の緊張から解き放つ文章をもって最善とする。筆者の人生観がしのばれて、かつ書き出しと関連した締めくくりならば申し分ない。キーワードは「余韻」。
まず書き出しを書く。次に、締めくくりを書く。最後に本題に取りかかる。普通に書き出し、本題の順で書いていくと、締めくくりで字数が足りなくなり、尻切れトンボに終わればコラム全体が台無しになる。締めくくりは削れない。削るべきは本題で、それが「編集手帳」の流儀である。
■書き出しの3原則
①短い
②年月日から入らない:読者の興味をひく要素がない
③会話文から入らない:書き出しの手法として一番安直
■裸の自分で締めくくる
俳句は五七五、短歌には七七がつく。俳句と違って短歌には構造上、「ため息」や「憤り」が表れる。一般のニュース記事を俳句とすれば、コラムは短歌である。事実を述べた五七五では足りず、書き手の喜怒哀楽なり、人生観なり、人間観なり、血の通った感情の七七がついてコラムになる。
著者 竹内 政明
1955年生まれ。読売新聞論説委員 読売新聞社に入社。長野支局を経て、東京本社経済部で財政、金融などの担当。1998年から論説委員。朝刊一面コラム「編集手帳」6代目執筆者(2001年7月~現在)。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
猫の水泳談義 ーはじめに | p.7 | 1分 | |
第1章 私の「文章十戒」 | p.9 | 19分 | |
第2章 構成、畏るべし | p.47 | 15分 | |
第3章 「出入り禁止」の言葉たち | p.77 | 16分 | |
第4章 耳で書く | p.109 | 13分 | |
第5章 ここまで何かご質問は? | p.135 | 19分 | |
第6章 引用の手品師と呼ばれて | p.173 | 15分 | |
第7章 ノートから | p.203 | 9分 | |
猫のひとりごと ーおわりに | p.221 | 1分 |
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