経済、環境、エネルギーなど30以上の分野にわたる世界のキーパーソンの観測を踏まえて、今後の40年間のグローバル予測をまとめた本。
気候問題への戦略やシナリオ分析を専門とするノルウェーの学者が2052年の未来を描き、人類への警鐘を鳴らしています。
■世界経済の成長は止まる
世界の総人口は、増加した後に減少する。2040年に約81億人で頭打ちとなり、2052年には現在の水準にまで下がる。また、過去40年間の特徴であった労働生産性の減速傾向は続く。そして、2052年には世界経済の成長は止まる。それは、石油や他の資源が不足するからでなく、人口と生産性の伸びが減速するからだ。さらに資源の枯渇が、生産性向上の減速に拍車をかける。
大量の化石燃料は手つかずのまま地中に残される。化石燃料の時代が終わるのは、単に人間がそれを必要としなくなったからだ。エネルギー使用量は予想されたほど伸びない。それは経済が予想されたほど拡大しないからだ。資源を効率的に使うようになるので、エネルギー使用量が減る。中でも化石エネルギーの消費は、価格面で並ぶようになった再生可能エネルギーへとシフトするため、予想されたほどには伸びない。しかし、再生可能エネルギーへの移行には時間がかかるので、結局、危険な温暖化を避ける事はできず、私達はそれがもたらすダメージと共に生きていかなければならない。
■2052年の未来
2052年、数十億の人は2012年より暮らし向きが良くなり、現在の欧米の生活水準に追いつく事ができる。しかし最も貧しい20億人は、現在の状況から抜け出せないままだろう。
物質的な生活水準を上げるには、大量のエネルギーが必要とされるため、今後も私達は、気候が耐え得る限度を超えて、化石燃料を燃やし続ける。この先の40年、地球の温暖化はさらに加速し、2052年には、気候変動の自己増幅がまさに始まろうとしているだろう。その頃、人間のエコロジカル・フットプリント(地球の環境収容力)を減らそうとする取り組みがようやく本格化する。これを支えるのが、気候変動による災害リスクを減らすため、国民の同意を得て国が行う投資である。それまで短期志向に支配され、すべてを先延ばしにしていた民主主義政権が、迅速で中央集権的な意思決定を真似るようになる。
2052年への道のりは平坦ではない。格差、緊張、社会の不和が広がっていく。社会の底辺では騒乱が続くだろう。その一方で、より地球全体の事を考えた持続可能価値を目指すパラダイムシフトが進んでいるだろう。しかし、気温は上昇し、生態系は破壊され、2052年の世界はその後の40年間のスタート地点としては、最善とは言いがたい状況にある。
■主なメッセージ
・世界の総人口は、都市化が進み、出生率が急激に低下する事で、2040年直後に81億人でピークとなり、その後減少する。
・世界全体のGDPは人口増加率が鈍り、生産性が減少することで、2050年に現在の2.2倍にとどまる。
・経済の成熟、格差などによる社会紛争の激化、異常気象によるダメージを原因として、生産性向上のスピードは鈍化する。
・気候の問題は2052年までは壊滅的レベルには達しない。しかし、21世紀半ば以降、気候変動に歯止めが利かなくなり、人類は大いに苦しむ事になる。
・資本主義と民主主義は短期志向になりがちであるため、長期的な幸せを築くための合意がなかなか得られず、手遅れになる。
・敗者となるのは米国、勝者となるのは中国。BRICS等の新興大国は発展するが、残りの地域は貧しさから抜け出せない。
著者 ヨルゲン・ランダース
1945年生まれ。BIノルウェービジネススクール教授 気候問題への戦略や対策、持続可能な発展、シナリオ分析法などが専門。WWFインターナショナル副事務局長、BIノルウェービジネススクール校長などを歴任。 多くの企業で取締役会の非常勤メンバーとして、持続可能性についてのアドバイスを行う。ブリティッシュテレコム、ダウ・ケミカルの「持続性に関する評議会」委員。 2006年、ノルウェー温室効果ガス排出対策委員会の議長を務め、2050年までに国内の温室効果ガスの排出量を現在の3分の2に削減するための対策をまとめ、政府に報告した。
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章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 未来についての懸念 | p.18 | 14分 | |
第2章 2052年に向けて危惧される五つの問題 | p.33 | 46分 | |
第3章 私の予測の根拠 | p.82 | 10分 | |
第4章 2052年までの人口と消費 | p.93 | 45分 | |
第5章 2052年までのエネルギーとCO2事情 | p.140 | 36分 | |
第6章 2052年までの食料事情 | p.178 | 37分 | |
第7章 2052年に向かう非物質的未来 | p.217 | 82分 | |
第8章 2052年の時代精神 | p.255 | 46分 | |
第9章 未来についての考察 | p.304 | 44分 | |
第10章 五つのグループの未来 | p.350 | 39分 | |
第11章 他の未来予測との比較 | p.391 | 30分 | |
第12章 あなたは何をすべきか? | p.423 | 39分 |