地球温暖化が深刻なダメージを与える
資源枯渇、環境汚染、気候変動、生態系の破壊に起因する問題に対処するために、より多くの資金が、修復、適応、新技術の開発に投じられる。これらの投資は被害を軽減し、生産性の低下を遅らせ、世界全体のGDPを押し上げる。しかし、投資に資金が回る分、消費は増えない。消費の伸びが鈍ると社会の緊張と不和が悪化し、生産性の向上がさらに鈍化する。切り分けるパイが小さくなるからだ。
もっとも、世界経済が2052年には大幅に縮小するという「事実」には、人類が地球の限界と衝突する時の衝撃が和らぐという利点もある。だからと言って大きなダメージがないという訳ではない。異常気象、海面上昇、洪水、干ばつは、数々の問題を次世代にもたらす。世界の気温は期間全体を通じて上昇し、工業化前からの上昇幅は2050年には2度になる。
1人当たりのGDPは増え続ける。しかし、2015年以降、環境対応への投資負担により、1人当たりGDPの成長は2050年頃ストップし、その後、減少していく。
食料生産は2040年頃、ピークになる。気候変動のせいで、農業に適した場所が減り始めるからだ。同時に気温上昇の悪影響が、収穫量の増加を鈍らせる。年間の食料生産量は、2040年に現在より60%近く増えたところで頭打ちとなる。しかし、1人当たりの食料は、2010年に比べて30%強しか増加しない。つまり、多くの人は依然として飢餓に苦しめられているのだ。
喜ばしいニュースは、今後40年間に生活レベルの劇的な低下は起こらないということだ。富裕国の中には1人当たりの消費が減少するところもあるが、経済が崩壊する訳ではない。
未来の地球にとって主な問題となるのは、私達が直面する問題をいかに解決するかという事ではなく、解決するための合意をいかに得るかという事にある。本当に難しいのは、大衆や資本家に短期的な利益を諦めさせて、この難題に取り組ませる事だ。
崖っぷちの状況
気候変動の自己増幅とは、現在の温暖化がさらなる温暖化を招き、その影響でますます温暖化が進むという、制御不能の悪循環が始まる事を言う。わかりやすい例は、ツンドラの南の縁が溶ける事で、強力な温室効果ガスであるメタンが放出されて気温が上昇し、さらにツンドラが溶けるというものだ。気候変動の自己増幅は、いったん始まると止めるのは不可能だという点で、他の問題とは性質が異なる。
2052年は、地球の平均気温の上昇が、危険な閾値であるプラス2度を超えると見られる年である。21世紀後半に気候変動が自己増幅し始めるかどうかは人々の反応次第だ。しかし、私達は温室効果ガスの排出量を一向に減らせないせいで、気候変動は手に負えなくなる可能性が極めて高い。