片道2時間の通勤を20年以上続け、「電車通勤士」を名乗るサラリーマンが、スマートな電車通勤のマナーを紹介。車内で最高に眠る方法から、座り方の作法、改札の利用法、駅トイレの作法まで、本気か冗談かわからない小技が満載の1冊。
■空気のように溶け込みながら乗車するべし
快適な電車通勤を実現させるにはどうしたらいいのか。その答えは、武道の理念に通じる。合理的に体を運用して「柔よく剛を制する」のである。流れにぶつかるのではなく、受け流す。空気のように溶け込みながら乗車し、スマートに着席して「正しいポーズ」でぐっすり眠る。周囲の乗客に気を配り、余計なトラブル、不毛な戦いを避ける。無駄をそぎ落とした合理的な動きはとても美しいもの。つまり快適な電車通勤は、美しい作法のもとに成り立つのである。
通勤中は会社と家庭、両方のしがらみから解放される貴重な時間でもある。これを「自分個人と社会の生の接点」であり、「社会性を学ぶ修行の時間」だと発想を転換してみる。「通勤時間は無駄」「通勤ラッシュは悪」と決めつけていると、電車通勤は不満を溜めるだけの場所になってしまう。どうせ滞在しなければならない空間ならば、快適さと有益性を追求して損はないはずである。
■押し付けがましくない席の譲り方
席を譲りたい気持ちがあっても遠慮されたら切ないという不安や照れから、しばし躊躇してしまう人もいるはず。そのような時には、おもむろに立ち上がり「次か・・・」「さてと・・・」などと呟きながら席を立つ。周囲になんの違和感も抱かせず、自然な流れの中で席を譲る事ができる。
但し、降りる素振りを取った以上は、いったん電車を降りざるを得ない。素早く移動して同じ電車の別の車両に乗り込む。姿を消す事には、タイガーマスクが最後まで自分の正体を隠して孤児院を援助したのと同様な「格好よさ」があるので、後でひっそりと陰のヒーロー気分を楽しむ。
■最高の眠りを得る方法
車中での睡眠でカギを握るのは、結局「安定性」に尽きる。揺れ動く車内で安らかな睡眠を得ると同時に、周囲に迷惑をかけない姿勢を取るポイントは次の通り。
①上着の裾をお尻の下にはさみ込む
この姿勢だと裾に自分の体重がかかるため、体を締め付けるように上着が下方に引っ張られる。睡眠時に体が傾かないようにバランスが保てる。
②座席から拳1個分空けてお尻を置く
一度、限界と思われるまで座席に深く座り、そこから拳1個程度、お尻を前方に戻す。その後、肩や背中を背もたれにぴったりとつけ、力を抜いて楽な姿勢を取る。
③両手は組み合わせ、膝の上に置く
腕を組むと、左右の肘のどちらかが浮いている状態になり、体のバランスが崩れ、安定性が著しく低下する。望ましいのは、両手の平を組み合わせ、膝の上に置く姿勢。
④両足は肩幅と同じまで平行に開く
両膝を開き、両足先をくっつけておく「逆ハの字型」は、リラックスするには最適だが、つい開き過ぎてしまい、迷惑行為につながりやすいので避けた方が無難。寝る前から適度に足を開いておく事が大切である。
⑤頭はうつむき加減に、口は閉じた状態に
頭をうつむき加減にすると、電車の振動に対して強い耐性を発揮する。よだれを垂らすリスクを避けるため、姿勢が決まったら、眠りに入る前に口は必ず閉じておく。
著者 田中一郎
1966年生まれ。電車通勤士 往復平均4時間の電車通勤を続けて現在28年目。これまでに赤羽線(埼京線運行前の大混雑路線)、高崎線、東武東上線、埼京線、丸ノ内線、山手線などの路線を中心に通勤。その過酷で多彩な通勤経験から生まれた「電車通勤の理論」をサイト『電車通勤士』にて発表。 頑張る日本の電車通勤者のために、電車通勤を快適にし、車内マナーの向上を目指す。電車通勤者のストレスを軽減するべく研究を続け、2012年からは新たに大学に入学、現在心理学を専攻中
日本経済新聞 |
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日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 03月号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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[はじめに] 不毛な戦いを避け、美しく電車通勤する | p.9 | 3分 | |
第1章 通勤電車の正しい乗り方 | p.15 | 16分 | |
第2章 着席時の作法 | p.47 | 15分 | |
第3章 さらに美しく乗るために | p.77 | 17分 | |
第4章 鉄道施設の利用方法 | p.111 | 11分 | |
第5章 危険から実を守る技術 | p.133 | 19分 | |
第6章 痴漢の傾向とえん罪 | p.171 | 8分 | |
[おわりに] 誰もが気配りできる環境を目指して | p.186 | 2分 |
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