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原点回帰するトヨタの取り組みとは

リーマン・ショック後、創業家出身の豊田章男社長が行ってきた経営改革の取り組みを紹介している本。「トヨタ生産方式」や「2000GT」など、これまでのトヨタの足跡なども内容に含まれており、トヨタの事がよくわかります。


■急成長のひずみ
トヨタに変化が訪れたのは、1995年に奥田碩氏が社長に就任した頃から。海外経験もある奥田氏は「石橋を叩いても渡らない」と言われた慎重な社風を変え、米国や中国などには次々と工場ができた。車づくりでは、高級車ブランド「レクサス」が軌道に乗り、量産ハイブリッド車「プリウス」は、トヨタのイメージを「安い小型車」から「環境・最先端の技術」に変えた。

だが躍進の裏側で、急成長のひずみも広がっていた。生産や開発の現場ではベテラン技術者が不足した。コスト削減を下請けに丸投げし、「トヨタは金をつくっているのか」と陰口も叩かれた。いつしか、世界一の販売台数や営業利益の規模が目標となり、成長の速度をゆるめる事ができなくなっていた。リーマン・ショック後、多くの問題が一気に露呈すると、トヨタの社員は自信を失い、次の目標も見つからなかった。

超短要約

■トヨタ生産方式を取り戻す
トヨタは1990年代後半から拡大路線を突き進み、世界中で工場を建設した。生産能力は毎年、富士重工業1社分に当たる約50万台増えた。2007年には生産台数で米ゼネラル・モーターズを抜き、世界一の自動車メーカーになった。だが、その足元は揺らぎ始めていた。

2008年秋にリーマン・ショックが世界を襲うと、大量の在庫を抱え、2兆円を超えた連結営業利益は2009年3月期、4610億円の赤字に転落した。大量の在庫。必要なものを必要な時に必要なだけをつくるトヨタ生産方式では、あってはならない。

トヨタ生産方式は、戦後の貧しさの中から生まれた。大野耐一は、限られた資金で設備と人をムダなく有効に使い、売れない時でも儲けが出る方法を考えた。大野流は本来、明文化したものではない。だが、「トヨタ生産方式」と名付けられ、次第に「かたち」が醸成された。それにトヨタ自身が縛られ、トヨタ生産方式のかたちを守る事が自己目的化しているように見える。世界一の自動車メーカーになり、貧しい中で知恵を絞り出す必要性は薄れた。高級・大型化路線を進め、コスト削減せずとも車は売れた。トヨタ生産方式とは乖離していたが、表面化しなかった。ところが、不況が矛盾をあぶり出した。

トヨタは原点に戻ろうと、生産現場を引き締める。ただ、現実は厳しい。円高、環境社会への対応、高い法人税率、厳しい労働規制、電力不足。しかし、ほぼ半世紀前、資金不足の中で大野がトヨタ生産方式の原点を見出したように、苦しい時にこそ、あっと驚く発想が生まれるはずだ。

■日本のものづくりと雇用を守る
宮城とミシシッピの新工場はリーマン・ショック以前に計画した。経済危機をきっかけに世界の車づくりは、生産コストの安い新興国へと重心がシフトした。それでもトヨタは、日米で地元との約束を守って工場を建設。雇用も生み、地元から喝采を受けた。

経済が急変しても「急ハンドル」は切らない。従業員をじっくり育て、守り、時に過剰といわれるほど品質を作り込む。そんなトヨタに対しては厳しい目もある。

トヨタは円高対策として採算が悪化している輸出を5年かけて減らす。国内でつくる車のうち、輸出に回す台数と、国内で売る台数の比率は6対4から5対5にする。国内生産の維持に国内販売の伸びが欠かせない構図だ。しかし、円高の影響を受けない国内販売には各社とも力を入れており、少子化で市場の縮小は必至だ。

トヨタの海外生産比率は約60%。日産自動車やホンダは70%超。トヨタには、為替リスクが、より強くつきまとう。国内生産と輸出を担うトヨタ単体は2012年3月期まで4年連続の営業赤字だ。他の製造業と同じように、トヨタにとってもこれからは、多くの困難が待ち受けている。

著者 朝日新聞社

全国紙『朝日新聞』を発行する日本の新聞社。新聞以外に雑誌・書籍の出版や芸術作品の展示・公演、スポーツ大会の開催などの事業活動も行う。

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土井 英司

章の構成 / 読書指針

章名 開始 目安 重要度
まえがき p.1 3分
第1章 創業家社長の挑戦 p.15 24分
第2章 走りの頂点をめざせ p.53 36分
第3章 ものづくりの心 p.109 28分
第4章 もう一つの母国 p.153 19分
第5章 スポーツの王国 p.183 17分
第6章 車工場がきた p.209 10分
第7章 復興への決意 p.225 15分
付録 豊田章男社長独占インタビュー p.249 18分
あとがき p.277 1分

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