統計学の考え方をどのようにビジネスに活かすのか?
営業活動における成約率、マーケティング活動に使われている回帰分析などの仕組みをわかりやすく紹介。
身近なところから統計学を理解する統計学の超入門書。
■555メカニクス
販売活動は「訪問」「提案」「クロージング」の3ステップに分解される。企業を訪問しても、決定権を持つ担当者に会えるとは限らない。提案内容が相手の心に響くかもわからない。最終ステップに進んでも、条件が合わないとクロージングできない。商談が成立するには、3つのステップを順番にクリアする事が必要がある。
すべてをクリアできる確率は、3ステップの突破率を掛け合わせた数字になる。各ステップの突破率を「コンバージョン・レート」と呼ぶ。3つのコンバージョン・レートがそれぞれ50%だとしたら、商談成功率は次のようになる。
訪問成功率(50%)×提案成功率(50%)×クロージング成功率(50%)=商談成功率12.5%
100回訪問しても成約できるのは13回。残り87回の商談は失敗である。現実は厳しい。
■ワインの価格は予測できる
ワインの価値は次のような重回帰分析の数式で表せる。
経過年数×0.0238+ぶどう生育期の平均気温×0.616ー収穫期の降水量×0.00386+ぶどう生育期の降水量×0.001173=ボルドーワインの価格
ボルドーワインが、経過年数(ビンテージ)、ぶどう生育期(4〜9月)の平均気温、収穫期(8月)の降水量、生育期前(10〜3月)の降水量、という4つの独立変数で決まるとは、業界に激震が走るのも納得である。
この重回帰分析モデルが凄いのは、決定係数=0.828、つまり82.8%の精度で予測モデルが当たる点にある。この統計モデルを解説すると以下のようになる。
・ボルドーの赤ワインは、1年寝かすと約2.4%価格が上がる
・生育期の平均気温が0.1度上がると、約6.1%価格が上がる
・収穫期の降水量が1ミリ増えると、約0.4%価格が下がる
・生育期前の降水量が1ミリ増えると、約0.1%価格が上がる
回帰分析から導き出した回帰式からは、近似線から大きく外れたアウトライヤー(外れ値)を発見できる。アウトライヤーたる理由があると仮説を立て、原因と結果に整理する。こうした手法はコンサルティング業界では一般的である。
■相関分析でレコメンデーションをする
オンライン書店で使われるレコメンデーションは、相関を応用している。相関度の強さは、相関関数という数値で表され、-1〜1の範囲に収まる。1に近いほど高い相関度がある。
オンライン書店は購入履歴から複数の変数を抽出し、それぞれの嗜好をベクトルに変換する。ベクトルの相関度が高い顧客の本から、まだ買っていない書籍をピックアップしてレコメンドする。
顧客の売上分析をすると、売上貢献度の高い優良顧客がわかる。「上位20%の優良顧客で80%の売上を占める」という事を教えるパレートの法則は多くの事例に当てはまる。優良顧客は何人もいるため、ここでレコメンデーションの考え方が活かせる。彼らが自然と欲しくなるものを、押し売りでなく紹介すると、購入確度が上がるかもしれない。
著者 斎藤広達
1968年生まれ。シカゴコンサルティング代表取締役 エッソ石油(のちのエクソンモービルマーケティング)に入社し、主にマーケティング関連の業務に従事。シカゴ大学経営大学院修士(MBA)取得後、ボストン・コンサルティング・グループ、シティバンク、ローランドベルガーなどを経て現職。主として企業再生コンサルティングを手がけている。
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日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 06月号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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prologue | p.1 | 2分 | |
chapter1 営業活動の標準確率モデル | p.13 | 21分 | |
chapter2 売れる確率、好かれる確率 | p.51 | 23分 | |
chapter3 ビジネスを進化させる統計技法 | p.93 | 24分 | |
chapter4 数字のマジック、伝え方のマジック | p.137 | 16分 | |
chapter5 成功確率を高めるテクニック | p.167 | 22分 | |
chapter6 どの業界で働くべきか? 産業統計の読み方 | p.207 | 9分 | |
epilogue | p.223 | 5分 |
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