マッキンゼーを辞め、DeNAを創業した経緯、創業期の失敗や資金集めの苦労など、これまでのDeNAの歴史が語られた1冊。
■起業のきっかけ
「そんなに熱っぽく語るなら、自分でやったらどうだ」
ネットオークションを立ち上げるべきと勧める経営コンサルタントの私に対して、ソネットの泉二社長が言った一言が人生を変えた。人の事業に横から口を出すコンサルティングという職業にどっぷり浸っていた私は、自分でやるという選択肢の存在に気付いてもいなかった。
一度でいいから自分で考えた事業やサービスが世の中に生み出されて大暴れするまで主体的にかかわってみたい、そんな思いはインターネット分野のプロジェクトを多く手がけるようになった1996年くらいから一層強くなっていた。
さらに言えば、愚かなおごりもあった。自分が経営者だったらもっとうまくできるんじゃないか。世の中のほぼすべての人が知っている「言うのとやるのでは大違い」というのを、年収数千万円のコンサルタントだけがうっかりするというのは、もはや滑稽といえる。
■モバゲーの誕生
DeNAはしっかりした黒字事業のビッダーズと伸び盛りのモバオクをもって、2005年2月、東証マザーズに上場する。モバオクに続き、携帯サイト向けの広告配信ネットワーク「ポケットアフィリエイト」も成功し、順調に成長していた。
上場後の大きな仕事は、無料で成長してきたモバオクを有料化し、収益事業として成り立たせる事だった。システム投資も軽いため、驚くほど利益率の高い事業となった。
時を同じく、2005年夏にモバゲーの検討が始まっている。守安が「今度ゲームをやろうと思います」と言ってきた。「確かにゲームユーザーはオークションユーザーより裾野が広そうだねぇ」そんな会話があった。でも、ゲームサイトは、すでにたくさんあるけどなぁ、などと思ったが、他の案件も多く、すっかり頭から離れていた。
守安のチームが、カジュアルゲームとSNSを組み合わせた携帯向けサービスのプランを提案してきたので、すべて任せた。モバゲーは始まってすぐに驀進を開始。成功の確信には数時間もかからなかった。
2008年初頭、モバゲーの売上の拡大がコツっと音を立てたように止まった。それまでのモバゲーの収益源は、アバターの着せ替えニーズだった。売上はヘビーユーザーに大きく偏り、盤石な構造とは到底いえないと経営陣全員が認識していた。
DeNAが身を置く業界は競争が激しいために、よく競合に対する意識を尋ねられる。けれども、真の競合は「ユーザーの嗜好のうつろいのスピード」だと認識している。それより半歩先に適切に動かなければならないのだ。
この時は、遅れ、方向を誤った。現状のアバターが飽きられたら、新しいアバターを導入しよう。2次元が飽きられたら3次元だ、次は動くアバターだと、開発を急いだのだ。成功のモデルは壊される前に壊さなければならない。アバターという勝ちパターンにこだわり、新しいトレンドを見失っていた。
2009年、ユーザー同士が戦ったり、協力し合ったり、対話をしながら楽しむ新感覚のソーシャルゲーム事業は、「若手のエース」というキーワードで集められたメンバーで始まった。秋に立ち上がった「ホシツク」「海賊トレジャー」「怪盗ロワイヤル」は、なかなかの出来で、「怪盗ロワイヤル」は一世を風靡した。
■競争力の源泉
DeNAの競争力の源泉は、とよく訊かれるが、答えは間違いなく「人材の質」だ。人材の質を最高レベルに保つためには、①最高の人材を採用し、②その人材が育ち、実力をつけ、③実力のある人材が埋もれずにステージに乗って輝き、④だから辞めない、という要素を満たす事が必要だ。
なぜ育つか、というと「任せる」の一言に尽きる。人は仕事によって育つ。失敗を重ねた挙句、成功体験でジャンプする。
著者 南場 智子
1962年生まれ。株式会社ディー・エヌ・エー (DeNA) ファウンダー 1986年マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。1990年ハーバード・ビジネス・スクールでMBA取得、1996年マッキンゼーでパートナーに就任。1999年同社を退社してDeNAを設立、代表取締役社長に就任。 2005年東証マザーズ上場を果たす。2011年病気療養中の夫の看病に力を注ぐため、代表取締役社長兼CEOを退任、代表権のない取締役となる。 2003年内閣IT戦略本部員、2004年規制改革・民間開放推進会議委員などを歴任。
週刊 ダイヤモンド 2013年 7/13号 [雑誌] |
帯2 脳科学者 茂木 健一郎 |
週刊 東洋経済 2013年 7/20号 [雑誌] |
週刊 ダイヤモンド 2013年 6/29号 [雑誌] 八重洲ブックセンター販売課 柏 明美 |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 08月号 [雑誌] |
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THE 21 (ざ・にじゅういち) 2013年 09月号 [雑誌] |
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2014年 01月号 [雑誌] |
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章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.1 | 4分 | |
第1章 立ち上げ | p.13 | 20分 | |
第2章 生い立ち | p.47 | 12分 | |
第3章 金策 | p.67 | 17分 | |
第4章 モバイルシフト | p.97 | 24分 | |
第5章 ソーシャルゲーム | p.139 | 16分 | |
第6章 退任 | p.167 | 16分 | |
第7章 人と組織 | p.195 | 24分 | |
第8章 これから | p.237 | 8分 | |
あとがき | p.251 | 2分 |
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