フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグが、現在の社会には女性のリーダーが少なく、男女の機会が平等でないことを問題提起する。女性はいかにキャリアを築くべきか、自身の仕事と育児の経験を交えながら、求められる女性のあり方を問う。


■一歩踏み出そう
世界を動かしているのは、やはり男である。男女を問わずすべての人にかかわる決定が下される時、女性の声は男性よりずっと少ない。世界に195ある独立国のうち、女性が元首を務める国は17カ国、女性議員の割合は20％程度。フォーチュン500社で女性がCEOを務める企業はわずか4％だ。さらに、女性の賃金は平均して男性より16％低い。

女性は職場で様々な障害物に直面している。男尊女卑の思想、性差別、セクハラ。社会に築かれた自分の外の障壁に加えて、女性は自分の中の障壁にも行く手を阻まれている。女性は大望を掲げようとしない。自分に対する期待を低めに設定し、相変わらず家事や育児の大半を引き受け、仕事上の目標を妥協する。男性の同僚に比べると、上の地位を目指す女性は少ない。女性が力を手にするためには、この内なる障壁を打破する事が欠かせない。

内なる障壁は軽視されがちで、話題に上る事もめったにないが、この障壁は自分の手で壊せるため、もっと注意を払うべきだ。

■完璧を目指さない
すべてを手に入れる、そんな望みを抱くのは、女性にとって危険な罠である。この言葉は、実際には欲求不満を募らせる。すべてを持っている人はいない。私たちは制約がある中での最適化に取り組まざるを得ない。人生とはそういうものだ。仕事、子供、社交など様々な要素に時間というリソースをできるだけうまく配分することで、自分自身を最大限に活用できるよう試みている。

私が大好きなフェイスブックのポスターがある。「完璧を目指すより、まず終わらせろ」がそれだ。このモットーを守ろうと試みたおかげで、到底実現できないような基準を自分に課す事から逃れられるようになった。

フェイスブックでの最初の半年間は、本当にきつかった。会社の大半はマークの指揮の下に働いており、エンジニアの深夜勤務は当たり前である。あるとき朝9時にミーティングを設定したら、相手は来なかった。当然夜9時の事だと思い込んでいたからである。

そうやって日々が過ぎていく内に、自分がコントロールしなかったらこの仕事は持続不能になってしまうと気付く。そこで断固として5時半にオフィスを出る事を自分に義務づけた。そして、やってみればできたのである。

完璧を目指すのはやめ、持続可能な目標を立てよう。「すべてをこなせるだろうか」と悩むのはやめ、「自分と家族にとって一番大事なことをできるだろうか」と問う事だ。

■男女平等の約束はまだ実現されていない
まず第一歩は、真の平等が未だ実現していない事を認め、目標達成には、政府でも産業でもトップの地位に就く女性が増える事が必要だと認識する事から始まる。次に、そのために全力で取り組む。ステレオタイプやバイアスが決意をくじき、信念を揺るがせ、現状維持を続けさせてきた事を、男女を問わずすべての人が認め、理解しなければならない。

多くの女性にとって、自分の会社や組織でトップになるなど、思いもよらない事だろう。しかし、もっと多くの女性が思い切って二歩も三歩も踏み出せば、現在の力関係に変化をもたらし、多くの人に道が拓けるだろう。

著者 シェリル・サンドバーグ

1969年生まれ。フェイスブック最高執行責任者(COO) フェイスブックに加わる前は、グーグルでグローバル・オンライン・セールスおよびオペレーション担当副社長、財務省首席補佐官を歴任。 マッキンゼーでコンサルタント、世界銀行で調査アシスタントとして働いた経験もある。このほか、フェイスブック、ウォルト・ディズニー・カンパニー、ウィメン・フォー・ウィメン・インターナショナル、Vデイ、ONEの取締役を務める。 リーン・イン基金の理事長。ハーバード大学にて経済学の学位、ハーバード・ビジネススクールにて経営学修士(MBA)を取得