IT革命によってつながった世界は、この先どうなるのか。仕事も富も先進国から新興国へと拡散していく現在をとらえながら、次なる社会の姿を描く。
■逆回転しはじめた世界
インターネットとコンピュータによる第三の産業革命は、以前の産業革命と全く性格が異なる。それは無料で動画や音楽、文章が伝わり、人間関係がつくられるというだけでは、富が増えないという点である。
さらに第三の産業革命は働き口を増やさない。21世紀の先端の企業は、たくさんの人を雇わない。その代わり、先端の企業は部品や組立てを行っている国には、たくさんの仕事を増やしている。つまり、仕事が世界中に散らされている。
20世紀型の世界システムでは、仕事は巨大企業に集められていた。だからこそ、企業の成長はその会社の中で働く人たちの幸せに直結していた。しかし、21世紀型のシステムは、仕事を企業の内側から外側に散らし、企業の中に幸せな人を多くつくる代わりに、世界中に幸せな人をつくっている。仕事や富が世界中に散らされる事によって、企業や国の中の結束も弱まり、民主主義の土台も揺らいでいる。これは20世紀の世界システムを逆回転させてしまっている。
<場>は人間社会のあらゆる分野を呑み込み、レイヤーへと切り分けていく。この流れは、もはや後戻りしない。<場>の中では、私たち1人1人もレイヤーによってスライスされていく。それらのレイヤーで横にすぐにつながる事のできる関係が<場>における人間関係となっていく。
1人1人が、レイヤーの積み重ねの中で浮かび上がるプリズムの光の帯のようなものだと自覚すること。そしてその積み重なりの、いったいどこに自分がいるのかという位置を確認し続けること。そういう絶え間ない確認作業の中にこそ、自分の立ち位置への愛着が生まれ、自分とレイヤーごとにつながっている人たちへのいとおしさがはぐくまれていく。
不安だけど、アメーバのようにくねくねと動き回りながら、自分の居場所を見つける努力を一生続けること。未来は、このような姿になる。超国籍企業がつくる<場>の上で、無数の小さなビジネス、無数の仕事、無数の文化が立ち上がり、そこで無数の人々がレイヤーごとにつながりながら1人1人の良き生を送っていく。
著者 佐々木 俊尚
1962年生まれ。日本のジャーナリスト・評論家 毎日新聞社入社後、警視庁捜査一課、遊軍などを担当し、殺人事件や海外テロ、コンピュータ犯罪などを取材する。 その後、アスキーへ移籍し、『月刊アスキー』編集部などを経て2003年2月退社。現在フリー。21世紀に入り台頭してきたネットメディアに関心を持ち、フリー以後は仕事の中心に据えている。
週刊 ダイヤモンド 2013年 7/13号 [雑誌] 三省堂書店営業本部課長 鈴木 昌之 |
週刊 東洋経済 2013年 7/13号 [雑誌] |
THE 21 (ざ・にじゅういち) 2013年 08月号 [雑誌] |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
PRESIDENT (プレジデント) 2013年 9/30号 [雑誌] KDDI総研リサーチフェロー 小林 雅一 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 2分 | |
プロローグ 現代―― 第三の産業革命が起きている | p.13 | 15分 | |
第一章 かつてヨーロッパは辺境の地だった | p.47 | 19分 | |
第二章 なぜ中世の帝国は滅んだのか | p.76 | 10分 | |
第三章 「国民」は幻想からやってきた | p.101 | 20分 | |
第四章 「民主主義」という栄光 | p.133 | 7分 | |
第五章 崩壊していく民主主義と国民国家 | p.144 | 11分 | |
第六章 すべては〈場〉に呑み込まれる | p.173 | 17分 | |
第七章 レイヤー化する世界 | p.200 | 9分 | |
第八章 「超国籍企業」が国民国家を終わらせる | p.214 | 16分 | |
第九章 新しい世界システムと私たち | p.239 | 20分 |
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