セールスに必要な3つの特質
「Always Be Closing(必ずまとめろ契約を)」は、セールスの礎石だった。だがこのアドバイスの効力は薄れつつある。買い手が最小限の選択肢や情報の非対称性に直面しているならば、これはもっともな助言だ。
だが今は、買い手が売り手と同じだけの情報を入手し、不正な取引に対しては、ツイッターなどで言い返せる手段も擁している。21世紀の環境で効果的に人を動かすために必要とされる条件は、次の3つである。
①同調(Attunement)
②浮揚力(Buoyancy)
③明確性(Clarity)
同調
同調(他者の視点になる)とは、自分の行為と見解を、他の人とも自分自身が置かれた状況とも調和を図る能力である。他人との同調は3つの原則によって決まる。
①力を減らすことにより力を増やす
力を付与された感覚を味わった者は、他の人の観点に同調しにくくなる。自分が相手よりも低い位置にいると最初から想定して、人と向かい合う。
②心と同じくらい頭を使う
深い共感は、自己の利益が後回しになりかねない。他人に関してだけではなく、相互関係や他者との結び付きに関しても把握する感覚が必要である。
③戦略的に模倣する
真似をしていると気付かれないようにそれとなく真似ると、同調の効果がある。
浮揚力
売り込みの世界では、波のように押し寄せる門前払い、拒否、否定と闘わなくてはならない。セールスの権威の大半が授ける救済策は、自分を奮い立たせる事だ。
①疑問文形式のセルフトークを練習する
「自分に〜できるだろうか?」と問いかけ、内発的動機による理由を考えるよう促す。
②ポジティビティ比を監視する
ポジティブな感情とネガティブな感情の比率が3対1になると、幸福度が高くなる。
③説明スタイルを調整する
最悪の局面を自分にどう説明するかが、成功を決定づける上で大きな役割を果たす。秘訣はネガティブな解釈に「異議を唱える」ことだ。
明確性
明確性とは、見えていなかった様相を明らかにし、それまで存在に気付かなかった問題を突き止める能力の事だ。誰もが豊富な情報を入手できる現代社会では、他人の問題を「解決」する能力よりも、問題を「発見」する能力が重要である。人を動かす手段として問題を認識するためには、長年利用されてきた2つのスキルを、今までとは逆さまにする必要がある。
①情報を入手する → 情報を監督する
膨大なデータを選別し、最適かつ明確な情報を他人に提示する。
②疑問に答える → 訊ねる
可能性を明らかにし、隠れた論点をあぶり出し、思いもよらない問題を見つけ出す。
物事は単独で見るよりも、対比した方が深く理解できる。重要な質問は「何と比べて?」である。