「事実」という言葉に惑わされない
話し合いに参加する人の中には、自分の考え方に沿って事実を解釈してしまう人がいる。事実に主観が加わったものは、事実ではなく事実の解釈に過ぎない。この問題を解決するには、まず「人間の思考というフィルターをかけられた事実は、もはや事実でない」と肝に銘じる。相手がそのような解釈に基づく主張をしてきたら、そこに事実以上の意味が加わっている事を相手に説明する。
感情は切り捨てず、プラスに利用する
感情を利用すれば、情熱的に自分の主張を訴える事ができるし、重要な事を強調する事ができる。感情がプラスに働くようにするには、話し合いの最中に高ぶった感情をコントロールする方法を覚えること。
①一歩身を引き、精神的にも肉体的にも息をつく時間を作る
②自分はどんな事に腹を立てるのかをあらかじめ理解しておく
③自分の言葉と態度を一致させる
④表現の仕方にも注意する
⑤話がスムーズに進むのではないかと期待してしまう気持ちを抑える
見えない要求に注意する
話し合いでは普通、目の前にある具体的な問題に焦点を絞る。しかし話し合いを左右するのはそれだけではない。話し合いに臨む人は、目に見える具体的な要求をするかたわら、目に見えない要求を出してくる。敬意がある事を示せ、こちらの体面を汚すな、といった事である。こうした目に見えない要求に対処する方法は以下の通り。
①目に見えない問題にも注意を向けて準備しておく
②話し合いが行き詰まった場合、一歩身を引き、目に見えない障害が隠れていないか考える
③自分の発言が相手に意図しない影響を与えていないか確認する
人生は金銭など目に見えるものだけで成り立っていると思われがちだが、人生において一番大切なのは、たいてい敬意や尊厳など目に見えないものである。話し合いの場面でもそれは変わらない。
交渉の力点はどこにあるのか考える
話し合いの力点は、交渉の当事者が何をおいても重視している事である。大半の人は、ある1つの力点にしか注意を払っていない。たとえば、それはお金である。その結果、他の大事な事を見落としてしまっている。話し合いの力点について注意すべき事は以下の通り。
①自分が何を重視しているのかをはっきりさせておく
②相手と同じ視点に立ち、相手が何を重視しているかを考える
③自分と相手の重視している事柄が違う場合こそ、話し合いをまとめる
④話し合いが行き詰まった場合、相手が本当に重視している事に気付いていないのではないかと考える