役割認識がはっきりしているほど売上成績が上がる
セールスという仕事には、常に恐れや不安がつきまとう。営業にはただのテクニック以上の複雑な心得が必要で、それがセールスマンとして成功するかしないかを決める。
1958年にギルバート・チャーチルら学者が発表した研究でわかったのは、販売環境が違えば、成功の要因も全く違うという事だった。長期にわたって身を削るような売り込みを必要とする工業製品の販売では、モチベーションが成功を左右する。その場限りの取引の場合、要領の良さという適性が大切になる。そして、モチベーションや適性よりも重要なのは、個人的な属性といった雑多な要因だ。しかし、どの研究にも共通する最大の成功要因は、役割認識だった。セールスマンが自己の行為をどう受け止めているかが、売上に最も大きく影響していた。
優秀なセールスマンとダメなセールスマンの違い
優秀なセールスマンとダメなセールスマンの違いは、自分に正直に行動していると信じられるかどうかにある。営業は、自分自身との葛藤も、また周囲との葛藤も避けられない職業だ。そうした葛藤に折り合いをつけられなければ、セールスマンとして成功できない。売り込みのたびに落ち込む事を恐れたり、大切な関係が壊れる事を怖がるようでは、成功できないのだ。
自分の行動をどこまでなら許せるのかを決められるのは自分しかいない。内向的で、気が弱くても、セールスマンの役割とそれに何が伴うのかをはっきり理解する力を養えば、最後には強い武器を手にする事ができる。
なぜハーバード・ビジネス・スクールでは営業を教えないのか?
成功と失敗の両方に、拒絶はつきものだ。そこには様々な言い方で「あなたは必要ない。あなたの商品もいらない。私の人生にかかわるな」と言う人々の長い列が存在する。それは生々しく、居心地が悪く、自分をさらけ出す仕事だ。この厳しい真実こそビジネススクールがビジネスというものを実際より残酷でないように描きたがり、営業を教える事を忌み嫌っている理由かもしれない。しかし、営業がなければビジネスは成り立たない。
どうお金を稼ぐか。どう人と接するか。どう成長したいのか。ビジネスマンが直面するあらゆる倫理問題は、営業マンが初めて売り込みで対峙する問いに行き着く。それは、お金のために自分はどこまでやるつもりがあるかという問いだ。
セールスマンに共通の特徴は、打たれ強さと楽観主義だ。だがそれを別にすれば、お金がやる気につながるセールスマンもいれば、自分たちに閉ざされた世界の壁を破るための効率的な方法としてセールスを仕事にする人もいる。ためらいを捨てて何かを上手に売る事は、僕らを動かすものの本質に対峙する事である。そして、それに正直に生きる事なのだ。