稲盛和夫氏が、日本経済の再生には、戦後復興の時のような「燃える闘魂」こそ必要であると語った1冊。京セラにおけるこれまでの体験を語りながら、経営者のあり方、そして働く人の心の持ち方を説く。
■「燃える闘魂」が必要である
近隣諸国の隆盛に比べ、近年の日本経済、産業の低迷ぶりがあまりに際立つ。社会全体の閉塞感も気になる。それは心のありようの違いではなかろうか。
日本は終戦直後、日々の食料にも事欠く有り様だった。しかし、日本人は悲惨な状況の中にあっても、希望を失う事はなかった。焼け野原に敢然と立ち、不屈不撓の一心を募らせていた。「何としても生き抜いていかなければならない」と、毎日を必死に生き抜いていた。また、日々限りない努力と創意工夫を重ねていった。そうして国民一人ひとりが、「なにくそ」と歯を食いしばり、努力と創意工夫を連綿と続ける事で、日本は経済復興を成し遂げた。
今の日本に必要なのは、この「負けてたまるか」という強い思い、いわば「燃える闘魂」である。戦後の経営者たちはみんな、「なにくそ、負けてたまるか」と闘魂を燃やし、互いに競い合い、切磋琢磨しながら、日本経済を活性化してきた。
日本の近代史を振り返ると「盛」と「衰」が40年ごとに転換する。明治維新で勃興した日本が、40年後の1905年に日露戦争の勝利で頂点を迎えたにもかかわらず、40年後に第二次世界大戦の敗戦で奈落の底に沈んだように、1945年の廃墟から立ち上がり、1985年に経済的ピークを迎えた日本は、その40年後の2025年には、どのような国家になっているのであろうか。
2025年には国債発行残高が1500兆円を超え、国債を国内で消化する事も難しくなると予想されている。また、日本は世界でも類を見ない速度で少子高齢化が進行している。国民2人でお年寄り1人を養う社会がほぼ確実に到来する。もし、少子高齢化が進む、社会保障費が拡大する中、労働人口が減少し、GDPが伸び悩めばどうなるのか。膨大な財政赤字を背負い、赤字国債の引き受け手もないという事態になれば、日本はまさに国家として破綻を迎える事になる。
しかし、誰もが自分とは関係ない話だと思ってはいないだろうか。やがて本当に国の借金を国民が負担しきれなくなる事、それによって国家が破綻してしまうという事実を明確に示し、危機意識を喚起しなければならない。
その上で、今の日本に何より必要なのは、「なにくそ、負けてたまるか」という闘争心、いわば「燃える闘魂」である。
著者 稲盛 和夫
1932年生まれ。京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者 日本航空(JAL)会長 1959年に社員8人で京都セラミツク(現京セラ)を設立。1984年には第二電電(DDI)を設立。 現在は、若手経営者向けの経営塾「盛和塾」を主宰し、若手経営者を育成する。独特な経営管理手法は「アメーバ経営」と呼ばれる。
帯 作家 五木 寛之 |
帯2 横綱 白鵬 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 11月号 |
TOPPOINT |
THE 21 (ザ ニジュウイチ) 2013年 12月号 [雑誌] 早稲田大学商学学術院教授 内田 和成 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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序 | p.14 | 6分 | |
第一章 日本の盛衰 | p.27 | 11分 | |
第二章 「燃える闘魂」の経営 | p.51 | 22分 | |
第三章 世のため人のため | p.97 | 11分 | |
第四章 徳をもってあたる | p.119 | 13分 | |
第五章 心を変える―日本航空の再建 | p.147 | 14分 | |
第六章 日本再生 | p.177 | 14分 |