朝日新聞の元論説委員が、本やニュースの読み方、情報整理、発想の技術などについて書いたコラム集。
■「問い」からはじまる
自分自身に対する問いかけがなければ、考えたり、書いたり、しゃべったりするための資料はどこからも出てきはしない。「問い」があってこそ、あらゆるものの意味が現れてくる。「問い」がなければ、「意味」もまたない。言うまでもなく、資料を探し出す苦労は常につきまとう問題であるし、ついには発見できないままになってしまう事も多い。しかし、いずれにせよ、はじめに「問い」がなければ、私達は考える事に向かって出発する事はできない。
その上で「質問の仕方」である。設問は、できる限り具体的に絞り込む事だ。人に何か教えてもらおうとして質問をしても答えてもらえない。そこで質問の方向、方法をちょっと変えてみる。すると、相手は「なんだ、そんな事だったのか」としっかり答えてくれる。質問を具体的に設定するように努める事で、私達は思考を広げ、具体化してくれる資料の方に向かっておのずと出発している事になる。
■読書に失敗はない
最近、出版物の数だけはやたらに増えているから、書店における本の「滞留」時間が短くなっている。思い出して、慌てて書店に行っても、もう平積みのところにはない。書棚に行ってしまった本は探すのが大変だ。その場で即座に本を買えないのは、1つには失敗を恐れるからだろう。しかし、失敗も読書のうち。読んで、つまらない、と感じるのは読んだからなのである。「つまらない」と思っても、それを「失敗」と考えてはいけない。「つまらない」と判断できた事をむしろ誇るべきなのである。失敗を心配するよりも、本質的につまらなく、くだらない本を、面白いと感じているかもしれない事の方を心配するべきなのだ。折角買ったんだからと、つまらないのを我慢して読み続ける必要はない。
いい文章を書くためには、人の文章をたっぷり読まなければならないのと同じに、いい本に巡り会うには、失敗を恐れずに本をたっぷり読まなければならない。限られた時間に、できるだけ多くの本を読むにはどうしたらいいか? 本を速く読むには、本をたくさん読んで、読むのに慣れるのが一番だ。
著者 轡田 隆史
1936年生まれ。元朝日新聞論説委員 大学後、朝日新聞東京本社に入社。社会部デスク、編集委員などを経て論説委員となり、1996年までの8年間、夕刊一面コラム「素粒子」の執筆を担当。その後、編集局顧問となり、1999年に退社。 テレビ朝日系ニュース番組「ニュースステーション」「スーパーJチャンネル」などのコメンテーター、日本大学法学部非常勤講師を務めたあと、現在はNHK・FMラジオ「日曜喫茶室」、著作、講演などで活躍中。 日本記者クラブ、日本ペンクラブ、日本エッセイスト・クラブ、日本山岳会会員、ポーラ伝統文化振興財団評議員。
帯 作家 白取 春彦 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.1 | 2分 | |
プロローグ | p.17 | 4分 | |
1章 「今日一日」からはじめる知的生活術 | p.27 | 9分 | |
2章 新聞から何をどう読み取っていくか | p.44 | 13分 | |
3章 「量の読書法」と「質の読書法」 | p.68 | 10分 | |
4章 「いい問いかけ」の条件 | p.87 | 5分 | |
5章 メモの作法と方法 | p.97 | 10分 | |
6章 「鍵の束」としての辞書と索引 | p.115 | 14分 | |
7章 「考えるきっかけ」をどうつかむか | p.143 | 11分 | |
8章 「書くこと」は「考えること」 | p.164 | 16分 | |
9章 「情報」を生かすための考え方 | p.193 | 9分 | |
10章 議論の方法―「論理的な考え方、話し方」とは? | p.209 | 5分 | |
11章 オリジナルなものを生み出す力 | p.221 | 11分 | |
12章 「好奇心の領域」を広げてゆく法 | p.241 | 8分 | |
13章 遊び上手は仕事上手 | p.255 | 6分 | |
おわりに | p.266 | 2分 |
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