トヨタの「カイゼン」の原点には、自分の頭で考えて問題を解決する人材の育成がある。どのようにしてトヨタは強い現場をつくる事ができているのか。その人材育成の考え方と仕組みを紹介した1冊です。
■現場の社員がリーダーになれ
トヨタには、絶対的なカリスマがいない。現場の第一線で働いている組長や工長の面々が一種のカリスマになるような会社である。そのような人材を現場で何人も育てられる風土こそがトヨタの強みだといえる。
トヨタでは仕事の成果も求められるが、同時に「自分の分身を何人育てられたか」も評価のモノサシになっている。自分の「分身」を育ててから、上位の職種に上がっていくので、リーダーが1人抜けても組織が停滞する事はない。
トヨタで真のリーダーとして評価されるのは、部下を伸ばす事ができる人である。仕事のできるリーダーは、部下に答えを与えて「この通りにやりなさい」という指導をしがちである。この方法では、部下は指示待ち人間になり、成長しない。一方、部下を伸ばすリーダーは仕事のプロセスにこだわるので、部下に自分で答えを見つけるように促す。部下は「もらった答え」よりも、「見つけた答え」の方が達成感を得られるので、どんどん成長していく。
■問題解決できる部下を育てることが大切
トヨタには「人をつくるとは、自ら課題・問題を発見し、解決するプロセスを習得すること」という考え方がある。つまり、部下が物事の本質・根本から考える習慣を身につけるように、上司は導いていく事が求められる。
トヨタの人材育成は、思考や問題解決のプロセスを通じて訓練していく事だといえる。トヨタの上司は、問題解決のできる部下を育てる事が仕事なのである。
■問題解決能力を高めて強い現場をつくる
トヨタの現場力の強さは、「きづく→うずく→ねづく」という問題解決のサイクルの繰り返しの中にある。
・きづく(現場を視える化する事によって問題に気付く)
・うずく(顕在化した問題を改善する)
・ねづく(改善した結果、その状態が定着し、現場の管理がレベルアップする)
こうしたプロセスを何度も繰り返す、つまり現場の社員が考えるクセをつけて、問題を見つけて解決する訓練をしていく。そうする事で、強い現場力が培われていく。
「きづく→うずく→ねづく」という問題解決のサイクルを繰り返し部下にやらせるのは、上司の仕事である。上司があるべき姿(標準)を示して、部下の気づきを促す。あるべき姿と現状のギャップ、つまり問題が明らかになれば、それを解決しようと部下はうずき、知恵を絞りはじめる。
■問題を視える化する
問題を顕在化するには、現場を「視える化」する事が大切である。そのための第一歩が「片づけ」である。
※参照『トヨタの片づけ』
http://www.bookvinegar.jp/book/12183/
■部下を困らせよ
トヨタでは、人が生み出す知恵を重要視している。知恵を出すには、お金はかからない。人が頭を使って、とことん考えれば、作業のムダを省いたり、効率化を図って、生産性を上げる事が可能である。
トヨタ生産方式の生みの親である大野耐一は「知恵を出す環境をつくり出すために困らせる」という言葉を社員に伝えていた。例えば「コストを下げながら品質も良くする」「走れば走るほど空気がきれいになる車を開発する」といった課題設定型の問題を与える。二律背反の状況に置かれた時、人ははじめてこれまでとは違う発想で、知恵を振り絞ろうと考える。
著者 OJTソリューションズ
トヨタ自動車とリクルートグループによって設立されたコンサルティング会社 トヨタ在籍40年以上のベテラン技術者が「トレーナー」となり、トヨタ時代の豊富な経験を活かしたOJT(On the Job Training)により、現場のコア人材を育て、変化に強い現場づくり、儲かる会社づくりを支援する。 本社は愛知県名古屋市。50人以上の元トヨタの「トレーナー」が所属し、製造業界・食品業界・医薬品業界・金融業界など、さまざまな業種の顧客企業にサービスを提供している。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
TOPPOINT |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.10 | 3分 | |
CHAPTER1 人が育つトヨタの考え方 | p.21 | 23分 | |
CHAPTER2 思考力が育つトヨタの問題解決 | p.71 | 18分 | |
CHAPTER3 やる気が育つトヨタの教え方 | p.111 | 23分 | |
CHAPTER4 チームが育つトヨタのコミュニケーション | p.161 | 17分 | |
CHAPTER5 リーダーが育つトヨタの現場力 | p.199 | 10分 | |
おわりに | p.220 | 2分 |