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考えさせることが最も大切

「よい品、よい考(かんがえ)」。これがトヨタの人材育成の基本精神である。よい品は利益をつくり、よい考は人をつくる。そして、よい品は、よい考えから生まれる。つまり、1人1人が意識して考えないと、会社の利益は生まれないという訳である。トヨタでは、人を育てる上で、考える事、そして考えさせる事を最重視する。それが昔からの企業風土となっている。

トヨタには「3行提案」という「創意くふう提案制度」がある。日々の業務の中で気付いた事、こうした方がいいというものがあったら、A4サイズの用紙1枚にまとめて上司に提案する。用紙の中には「現状」「改善案」「効果」などを簡潔にまとめるようになっており、これが改善の種となる。毎月、工場単位で優秀な提案が選ばれ、賞金がもらえる仕組みになっており、約6万人の社員から年間70〜80万の提案が上がってくる。こうしたボトムアップの提案がトヨタの強さの源になっている。

どんな仕事でも考える事が仕事の質を高め、人が育つ基盤となる。3行提案を取り入れる事で、提案する部下、提案を受ける上司も「どうすれば良くなるのか?」を考えるようになった。

標準をつくって改善を加える

トヨタには「標準」という考え方がある。「標準」とは、各作業のやり方や条件であり、具体的には、作業要領書や作業指導書、品質チェック要領書など多岐にわたる。これらは各現場で少しずつ作られてきたもので、現場の知恵が凝縮された手引書である。こうした「標準」があるからこそ、作業や品質が一定のレベルを保つ事ができる。

「標準」をつくるのは、上司の仕事である。「標準」があれば、目指すべきところがはっきりするので、部下は自分で判断できるようになり、仕事の精度も上がっていく。トヨタの「標準」はそこから改善を加えていく。もし部下が「標準」を守れないなら、「標準」自体に何か問題があると考え、見直さなければならない。

モノの見方を伝える

「これがいいこと」「これが大切」という事を現場できっちりと教える事が、部下の成長につながる。上司は発想や考え方といったモノの見方を伝えなければ、部下は判断や行動に拠り所を見出す事ができず、個人の能力や裁量に依存した組織になってしまう。

トヨタでは「これがいいこと」「これが大切」といったモノの見方を現場の仕事のプロセスの中で教えていく。どういう思考に基づいて、どういう行動をとったかというプロセス管理が大事にされている。結果が出ていなくてもプロセスが間違っていなければ、「このやり方は良かった」と評価してあげる。こうしてプロセスを肯定された部下は、モチベーションが上がり、「他により良い方法はないか」と自分の頭で考えていく。