相手との共通認識と違いを見極める
議論するメンバーが変われば,議論の内容も変わる。展開が予測できないため、様子を見る必要がある。さらに肝心なのは多様な発想を誘発し、意見や提案として引き出す事である。なぜなら、ビジネスの場面では複雑な要因が絡み合っているため、議論が偏ると決定的なポイントが抜け落ち判断を誤ってしまうからである。こうした理由から「グリーンライティング」という、ブレインストーミングの初期段階ではどんなコメント、意見、発想にも否定的な反応をせず受け入れるルールが使われるようになった。ポイントは3つ。
①課題をしっかり定義する
②ルールを前もって説明する
③ルールが守られていることを確認する
このやり方は、国籍の違う人たちが集まった混合メンバーの場合、特に使い勝手がよい。「当たり前なこと」がそれぞれ違うメンバーの共有認識や知識がどれぐらいあるのかを見極める事ができる。
異文化の環境の中で、発言する場合に重要なのは、自ら発言しなければ存在が認められない事である。外国人に対する尊敬と信頼は自らの発言内容や行動でしか守る事はできない。賢く主張するには、短くても十分伝わる「サウンドバイト」というテクニックを使う。使う言語はカタコトの外国語でも通訳を介した日本語でもいい。鍵は濃縮されたエッセンスだけを短く伝える事だ。良いサウンドバイトが見つからず主張するタイミングを模索している時は、質問をすると恥をかかなくてすむ。他人の発言内容を確認するための質問に対しては批判する人は少ない。有効な切り口は、「日本の顧客ニーズはこうなのだが、中国ではどうだ?」といった異文化に関連する比較だ。
信頼関係を構築する
アメリカで成功したCEOたちに信頼関係構築の秘訣を聞いて見ると、一番多く返ってくる答えは「相手を個人として尊敬することだ」という。売り込む際、異文化の視点から考える時、相手を「信頼に値する企業の役職を持つ人」ととらえるのと、「尊敬に値する個人」ととらえるのとでは雲泥の差がある。外国で信頼を構築する鍵は3つある。
①売り込む人がオープンな価値観の持ち主であるかどうか
多民族国家では、思い込みが激しく、相手の常識、価値観や習慣を受け入れない人は敬遠される。
②主張に論理的説得力があり、一貫性があるかどうか
西洋諸国では論理的思考が、意思疎通の重要な手段として養われてきた。
③説得をしようとしている人を個人として尊敬できるかどうか
握手の仕方、相手の呼び方、服装、姿勢、マナー、趣味、哲学、経歴、話題などから全体的な印象に基づき尊敬が生まれる。