ツイッターで歌詞をつぶやくと有料、パロディ作品は認めない。ユーザーがコンテンツを作成する時代に対応できていない日本の著作権法の問題を指摘する。
■著作権の目的とは
著作権法の目的は、「文化の発展に寄与すること」であって、特許法のように「産業の発展に寄与すること」ではない。しかし、日本の著作権法は文化の発展に寄与しているとは言えない。
2012年6月に著作権法改正案が成立した。海賊版と知りながら音楽や映像のファイルをダウンロードした場合、2年以下の懲役か200万円以下の罰金を科すというものだ。この刑罰化に対して、ネットユーザーの間では「ネットの自由を阻害する」と反対の声が上がった。しかし、ユーザーは著作物の利用主体として、本来、著作権法の目的である文化の発展に寄与する存在であるはずだが、蚊帳の外に置かれてきた。
音楽業界が違法ダウンロードの刑罰化を働きかけた背景には、「違法ダウンロードが音楽CDの売上減につながった」とする、日本レコード協会など業界団体の強い意向がある。しかし、私的ダウンロードは国の文化政策にかかわる問題である。スポーツでも何でもアマチュアの裾野が広いほどプロは強くなる。日本のコンテンツを世界に売り込むためには、コンテンツを生む裾野を広くしなければならない。そうした側面に配慮することなく、音楽業界の主張を鵜呑みにするのは近視眼的すぎる。
現在の著作権法は、新たなビジネスモデルを創出し、経済社会を発展させるイノベーションとは相容れない性格を持っている。日本では、立法・行政・司法の三権と業界で固めた鉄壁の「著作権ムラ」が著作権法をがっちりコントロールし、既得権や古いビジネスモデルを死守しようと躍起になっている。その結果、もはや時代遅れとなった弱体な分野を、いわばユーザーの負担によって支え続けており、日本経済全体のジリ貧を招いている。
著作権法は文化の発展に寄与する事が目的であるのに対し、特許法は産業の発展に寄与する事を目的としている。ただ、著作権法も近年、ビジネス法の側面を強めつつある。しかし、日本の著作権法は産業の発展に寄与するどころか、新技術・新サービスの芽を摘み取ってきたのが現実である。さらには、本来の目的である文化の発展にも寄与しているとはいえない。例えば、動画共有サービスなどのソーシャルメディアでは、ユーザー作成コンテンツが主流になっており、ユーザーがコンテンツ作成の主役である。しかし、日本の著作権法は、フェアユースの規定がなく、著作権の刑罰がユーザーを萎縮させている。今こそフェアユース規定を導入すべきである。
著者 城所岩生
1941年生まれ。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター(GLOCOM)客員教授 NTTアメリカ上席副社長、米国弁護士(ニューヨーク州、首都ワシントン)、成蹊大学法学部教授を経て2009年より現職。成蹊大学法科大学院非常勤講師も務める。 デジタルネット時代の著作権問題に精通した国際IT弁護士として活躍。
帯 ジャーナリスト 津田 大介 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに | p.3 | 4分 | |
第1章 世界の潮流に逆行する日本の著作権法 | p.17 | 13分 | |
第2章 著作権者の保護に躍起になる人たち | p.41 | 18分 | |
第3章 日本発・新サービスはこうして葬られた! | p.73 | 20分 | |
第4章 日本発・画期的発明はこうして葬られた! | p.109 | 12分 | |
第5章 デジタルネット時代に取り残されるテレビ局 | p.131 | 12分 | |
第6章 世界はさらに進んでいる | p.153 | 18分 | |
第7章 いまこそ著作権法改革を急ごう! | p.185 | 23分 | |
エピローグ――「ロビーイング2・0」のすすめ | p.227 | 6分 |
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