ビッグデータとジオフェンシングが生み出す新しいビジネスの可能性について書かれている本。
■位置情報がビジネスを変える
スマートフォン時代で大きく変わったのが、行動に伴って取得できるデータ量の増大だ。パソコンで地図を検索する時に地図サービス側が検索者から取得する情報は、いいところ「見つけたい地名」くらいのもの。しかしスマートフォンの場合には違う。検索した場所・時間の情報はGPSでほぼ正確に取得できるし、そこからナビを使って目的地に移動するまでの経路もわかる。また、移動中のGPSデータは常に検出されており、それもネットワーク側に蓄積される。フィーチャーフォンからスマートフォンになるだけで、少なくとも10倍、たくさん使う人の場合で60倍近くのデータ通信を行うようになっている。
人が移動した情報は、そこで「何をしたいか」と大きく関係する。どの場所に行くとどういう行為がおすすめなのか、その場所に行くならどのような情報を出すべきか、という事に絡む行為を「ジオフェンシング」と呼ぶ。アップルは「iOS7」に「iBeacon」という機能を搭載した。iBeacon対応チップが埋め込まれた場所に人が近づくと、iPhoneがそれを自動的に感知し、自動的に情報を表示する。アップルは「次のビジネスを変える武器」として、ジオフェンシングに取り組み始めているのだ。
我々の行動はどんどん記録されるようになり、そこからの類推はマーケティングに活用されるようになっている。そこには多様なビジネスチャンスもあるが、多くの人は「そんなに自分の行動を追いかけられても気持ち悪い」と感じるのではないか。
そもそもマーケティング活動は「人にモノを買ってもらう、サービスを利用してもらう」ためにある。見せる事は製品の周知につながるが、その結果、消費者に嫌われてしまっては本末転倒である。個人の属性を追いかけて広告を見せる機会を増やす目的であれば、一見正しいやり方に思える。だが、実際には、あまりに同じ広告が出続けると不自然に感じるものだ。
個人情報を活用したマーケティングの手法は、「その個人から付かず離れずを繰り返し、最大の広告効果を狙う」ものと、「感情など無視して無作為に同じ行為を繰り返す」ものの2パターンに分かれていくのだろう。だが、戦略に基づかない「バナー広告の乱れ打ち」の効果は否定されつつある。
著者 西田 宗千佳
1971年生まれ。フリージャーナリスト 得意ジャンルは、パソコン・デジタルAV・家電、そしてネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。 取材・解説記事を中心に、主要新聞や「ブルーバックスサイト」などのウェブ媒体等に寄稿する他、年数冊のペースで書籍も執筆。テレビ番組の監修なども手がける。
帯 ジャーナリスト 津田 大介 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
---|---|---|---|
はじめに 「見えない」時代に「フェンス」をかけて | p.1 | 5分 | |
第一章 「メガネ」対「腕時計」 | p.15 | 15分 | |
第二章 地図は「一次元化」する | p.41 | 19分 | |
第三章 その「行動」で世界が決まる | p.73 | 22分 | |
第四章 バーチャル・フェンス | p.111 | 21分 | |
第五章 「知られること」恐怖症 | p.147 | 20分 | |
第六章 行動データがお金を生む仕組み | p.181 | 17分 | |
おわりに | p.209 | 2分 |
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