なぜリスクを考える必要があるのか?
個人もしくは会社がリスクを考え対処しなかった場合、様々なトラブルが待ち受けているかもしれない。リスクに対処するためのアクションを起こすには、コストがかかる。ビジネスを行う上では、収益からリスクにかかるコストを控除したものを、最大化する行動をとる事が、持続可能で安定した収益を確保できる企業を築き上げる。そのためにも、リスクを見える化する事が欠かせない。
リスクを考える際に持っておきたい7つの視点
過去の経験をもとにリスクを論じても、有益な結論は見出せない。バイアスを排除し、なるべく客観的な見方をするためには、どの観点でリスクを見ているのかをクリアにする必要がある。
①最大損失:損失の最大値
②確率:ある事象の発生可能性を表す尺度
③平均損失:損失額の平均値
④ボラティリティ(ex.標準偏差):将来の不確実性を表す尺度
⑤保有期間:リスクにさらされている期間
⑥相関:2つの事象がどの程度関連しているのかを表す尺度
⑦資本:予期せぬ損失に対処するために保持すべきバッファーのお金
不確実性を描写する
平均は、統計モデルの世界では、位置を知らせる統計量と呼ばれている。しかし、平均だけでは完全な位置はわからない。そこで、中央値という集団の中央にある値も確認する。平均が集団の代表的な値を示す事もあるし、中央値が代表的な値を示す事もあるので、それを使い分けるチカラを持つ事が大事である。どちらが、リスク集団の位置を示すのかは、リスク集団の分布のカタチに依存する。この集団全体のカタチを把握するために用いられるのが、確率変数という概念である。
確率変数は、不確実性を描写するためのパワフルなツールである。例えば、自動車事故に遭遇するか否かは不確実である。この不確実性を描写しなければ、損害保険会社は自動車保険を販売する事はできない。それを可能にするのが、確率変数である。
自動車事故のようなレアな事象の発生件数を、最もシンプルな手法で表現するには「ポアソン分布」と呼ばれる確率分布に従う確率変数を用いると良い。
平均と標準偏差がわかれば、分布の全容を把握できる「正規分布」と呼ばれる確率分布もある。平均を中心とした左右対称の分布になる。
確率変数は無数にある。どの不確実性に、どの確率変数を結び付けるのかは、ある意味職人芸である。この職人芸を「モデリング」と呼ぶ。アクチュアリーは、お金に関係する様々なリスクの「モデリング」を行う統計実務家なのである。