環境の変化が激しい今日の市場では、持続的な競争優位は存在しない。これまで持続的な競争優位の構築を前提としてきた戦略ツールは通用しないとし、新たな競争戦略を提示しています。
■競争優位の終焉
現在用いられている戦略のフレームワークやツールはほぼすべて「戦略の目的は持続する競争優位の確立だ」という考えに支配されている。ところが多くの企業にとって、この考えはもはやふさわしいものではなくなってきている。
企業の持つ優位性が競争を通じてあっという間に消えてしまう市場の性格を「超競争」と表現される。組織を巧みに運営し、質の高い製品を開発し、名の通ったブランドを構築するだけでは、過熱し続ける国際競争の中でトップを維持するには不十分である。
競争優位が持続しない、あるいはかつてよりはるかに短期間しか持続しないのなら、戦略のシナリオを変える必要がある。リーダーが継承してきた多くの戦略は、ある時点では理にかなっていたとしても、今日の変化のペースにはついていけない。
持続する優位性という想定が生み出す安定重視の姿勢は、あらゆる間違った反応を引き起こす。既存のビジネスモデルに沿おうとする惰性と力を強める。人々の精神を型にはめ、習慣に従わせる。縄張り争いや組織の硬直化を招きやすい状況をつくる。イノベーションを妨げる。
不安定で不確実な環境で勝つためには、経営陣はつかの間の好機を迅速につかみ、かつ確実に利用する方法を学ばなければならない。戦略の最終目標を、持続する競争優位の構築から一時的な競争優位の活用に移す事だ。
既存の競争優位を守るのではなく、優位性から優位性へ移行する。今日の企業でおなじみの大幅な人員削減や事業再編にかわって、劇的というよりも規則的な周期で撤退が起こるのである。
優位性が一時的なものに過ぎない状況で、価値ある存在であり続けるためには、再構成を通じて、資産、人員、能力が1つの優位性から別の優位性へと移行する事が必要である。古い優位性から絶えず資源を引き揚げ、新たな優位性の開発に投資する事である。
著者 リタ・マグレイス
コロンビア大学ビジネススクール教授 不確実で不安定な経営環境における戦略の権威として、世界的に高く評価されている。ピアソン、コカ・コーラ、GEなどの企業にコンサルティングを行っている。 2011年、2013年には経営に関する世界的な賞である「Thinkers50」によって、「経営思想において最も影響力ある20人」および「ツイッターでフォローすべきビジネススクール教授10人」の1人に選ばれている。
TOPPOINT |
日経ビジネス |
帯 ハーバード・ビジネススクール教授 クレイトン・クリステンセン |
帯2 キャズムグループ代表 ジェフリー・ムーア |
帯3 イノサイト共同経営者 スコット・アンソニー |
帯4 アクセンチュア元CEO ウィリアム・グリーン |
帯5 アルコアCEO クラウス・クラインフェルド |
日本経済新聞 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1章 競争優位の終焉 | p.1 | 23分 | |
第2章 シナリオ1 継続的に変わり続ける――安定性とアジリティーの両立 | p.31 | 23分 | |
第3章 シナリオ2 衰退の前兆をつかみ、うまく撤退する | p.61 | 22分 | |
第4章 シナリオ3 資源配分を見直し、効率性を高める | p.89 | 26分 | |
第5章 シナリオ4 イノベーションに習熟する | p.123 | 33分 | |
第6章 シナリオ5 リーダーシップとマインドセットを変える | p.165 | 23分 | |
第7章 シナリオ6 あなた個人への影響について考える | p.195 | 22分 |
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