行動経済学の第一人者ダン・アリエリー教授が、人間の奇妙な行動や心理パターンを面白実験やケーススタディを通じて、わかりやすく解説しています。
■人間は不合理な存在である
直感が示す道は本当に正しいのかどうかを考えてみる事が重要だ。直感の正しさを証明するデータはないし、直感は直感に過ぎない。一度自分の直感や視覚にとらわれてしまうと、人間は外から得た情報をフィルターにかけて脳に送る。自分の直感を信じるあまり、先入観を持ってその情報を判断してしまう。
私達は一般的に「目的」や「目標」「願望」といった壮大なものが人々を動かしていると思っている。しかし、人間の行動のもとになっているものは、目的でも、目標でも、願望でもない。食べ過ぎる、運動をしない、節約できない。私達は皆、目標も目的も願望も持っているが、現実にはそれらが日々の行動とは全く結びつかない。
自分が考えている内容と実際の行動が一致しない事から、何がわかるだろうか。まず、人の言っている事はそれほど信用できないという事だ。人は、自分の行動について、都合のいい理由をつける。普通は、自分の行動について本人が理解している事は、真実からかけ離れている。だから、何が人の良い行動を妨げているのかをきちんと考える事には大きな意味がある。そして、小さな事をちょっと変えてみる事こそが大事である。
■人はやりがいを過小評価する傾向がある
社員のモチベーションを高めるためにボーナスを与えると、それが逆効果になる事がある。
私達は、人との社会的関係や、思いやりを重視する「社会的な世界」と金銭で物事を捉える「金銭的な世界」の2つの世界に住んでいる。人により良い行動をとってもらいたい時は、この2つが全く異なるものである事を知っておく必要がある。
もちろん大金を支払って人に何かを頼む事は可能だ。でも金額が少ないと、お金の話が人のモチベーションを逆に下げてしまう事がある。社会的なモチベーションと金銭的なモチベーションは共存できない。
普通、報酬を増やせば人々のモチベーションは上がると考えがちだ。でも、モチベーションに影響を与える要素は他にもたくさんある。やりがい、創造、挑戦、所有、アイデンティティ、プライドなど。人はお金だけで報われるものだろうか。人を幸せにする事こそが大事である。
著者 ダン アリエリー
1968年生まれ。デューク大学教授 行動経済学研究の第一人者。テルアビブ大学で心理学を学んだ後、ノースカロライナ大学チャペルヒル校で認知心理学の修士号と博士号、デューク大学で経営学の博士号を取得。 その後、MITのスローン経営大学院とメディアラボの教授を兼務した。この間、カリフォルニア大学バークレー校、プリンストン高等研究所などにも籍を置いている。 18歳のとき、全身70%にやけどを負う事故にあい、3年間を病院で過ごした。その結果、いささか型破りなものの見方を身につけたという。その研究のユニークさは、2008年度にイグノーベル賞を受賞したことでも証明されている。
マインドマップ的読書感想文 smooth |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第1回 人間は“不合理”な存在である | p.7 | 19分 | |
第2回 あなたが“人に流される”理由 | p.39 | 17分 | |
第3回 デート必勝法教えます!?―人々の感情をどう動かすか | p.69 | 19分 | |
第4回 ダイエット成功への道!―自分をコントロールする方法とは | p.101 | 19分 | |
第5回 “お金”の不思議な物語 | p.133 | 19分 | |
第6回 私たちは何のために働くのか?―仕事のモチベーションを高める方法 | p.165 | 19分 |