コンシェルジュの仕事
コンシェルジュの1日は、正面玄関の扉の鍵を開けるところからスタートする。これはいわば「門番」としての役回りである。開店すると、正面玄関付近に立ち、お客様をお迎えする。そして、視線を周囲にめぐらしながら、何か尋ねたいこと、お困りのことがあるのではないかと、目配りをする。大事なのは、お客様のご要望を細大漏らさず引き受けること。コンシェルジュはお客様に「あ、あの人に相談してみよう」と思って、気軽に近づいて頂ける雰囲気を身にまとっていなければならない。固定客のお客様は該当の各売場に「止まり木」を持っているが、そのお店全体の「止まり木」として、コンシェルジュの存在感がある。
コンシェルジュの日々の業務は4つある。
①お客様のご意見・ご要望を伺う
②お客様へのご案内や各種情報の提供を積極的に行う
③お買物のご相談にお応えする
④お体の不自由なお客様のお手伝いをする
とりわけ重要なのは①である。開店から閉店まで、片時も気を抜かず「お客様の声は残さず吸収する」気概をもって臨む必要がある。
ご要望のあるお客様は、実はコンシェルジュが自分と目を合わせるのを待っている。だからこそ、方々に視線を動かすにしても、できるだけ多くのお客様と目を合わせなければならない。こうして、ご要望がありそうなお客様を見つけたら、こちらから近寄っていく。そして、「いらっしゃいませ」とご挨拶し「何かお手伝いする事がございますか」とお尋ねする。お客様が話し始めたら、姿勢を低くし目線を合わせて真摯に耳を傾ける。
大事なのは、ご来店、ご利用を心から感謝する気持ちを持つこと。そうすれば、自然と表情がほころび、いい笑顔が浮かんでくるはずである。こういった立ち居振る舞いを身につける事が、コンシェルジュの基本中の基本と言える。
コンシェルジュの辞書に「ノー」という言葉はない
お客様のどんな要望にも対応する事を信条にしている。お客様へのお応えとして「ありません」「できません」「知りません」というような否定的なお応えではご満足されない。これを口にした瞬間に、お客様を失ってしまうと言っても過言ではない。
現実問題、確かに「ないものはない」し、「できない事はできない」。それでも、お客様にご満足頂けるにはどうすれば良いかを考え、行動する事が大切である。ポイントは「今の商売」「今の自分」で勝負しないこと。現状がどうであれ、そこから離れて、視点をぐっと広げる事で、対応策が見えてくる。「ない」と言っても、「今、ここにない」だけで、探せばどこかにあるはずである。例えば、取扱いのある他の店を調べてお教えするとか、場合によってはメーカーに問い合わせて取り寄せるとか、ご要望に合う他の商品をご紹介するとか、できる事はいくらでもある。