成功企業は「バカな」と「なるほど」の2つの特徴を同時にもつ戦略を行っている。28社の成功事例を紹介しながら、成功する経営戦略とはどのようなものかを考えさせる1冊です。
■「バカな」と「なるほど」
成功する戦略には2つの条件がなければならない。差別性と合理性である。差別性とは、多くの企業がとっている常識的な戦略と違う戦略、つまり非常識な戦略である。平たく言えば「バカな」と言われるくらい他社と違う戦略である。
もう1つの条件は、合理性である。よく考えられていること、理屈に合うこと、論理的であることである。平たく言えば「なるほど」と納得のできることである。
戦略の2大条件の差別性と合理性の内、差別性の方が重要である。合理性の方を重視すると、平凡な、常識的な戦略になりやすいからである。常識的な戦略では競争に勝てない。競争に勝つためには、競争会社の戦略とは違う独自な戦略がなければならない。
戦略の差別性には、2通りある。1つは「大したものだ」などと言われる差別性。いま1つは、バカよばわりされる差別性である。尊敬される差別性より、後者のバカにされる差別性の方が重要である。「バカな」戦略の場合、模倣が遅れやすい。
成功している企業について研究してみると、戦略、組織、人事、工場マネジメント、マーケティングなど経営の仕方が、一見したところ非常識と思えることが少なくない。「そんなバカな」と思わず言いたくなる。ところが、経営者や実務担当者から説明を受けると、理屈が通っており、「なるほど」と納得せざるをえない。
このようにして、「バカな」と「なるほど」の2つの特徴を同時に持つことが、経営で成功するための秘訣である。
経営の世界は競争の世界である。他の多くの企業と同じようなことをしていては、競争に勝てない。他社と違うことを考え、実行しなければならない。業界の通念や慣行を打ち破る斬新な経営を展開しなければ、競争の世界で成功者になれない。成功している企業は「バカな」と言われるくらいユニークでイノベーティブな経営を考え出し、実行している。
その成功企業の経営は外部の者には「バカな」とみえても、実はよく考え抜かれており、「なるほど」と納得できる合理性を有している。一見したところは非常識に思えるが、実はよく考えられており、合理的である。こういう経営の手を考え出して実行しているのが、成功企業なのである。
著者 吉原 英樹
1941年生まれ。神戸大学名誉教授 神戸大学経済経営研究所助手を経て、1984年より同教授。2005年に南山大学に移り、2012年まで同大学院ビジネス研究科教授を務める。
帯 一橋大学大学院国際企業戦略研究科教授 楠木 建 |
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はしがき | p.29 | 2分 | |
第一部 常識破りの発想 | p.40 | 1分 | |
1 「バカな」と「なるほど」──成功する戦略の二大条件 | p.42 | 5分 | |
2 答えをみながら答案を書く──創造的戦略の発想法 | p.51 | 5分 | |
3 べき論より予測論を──経営者の先見力強化法 | p.60 | 4分 | |
4 ダブダブの洋服の戦略メッセージ──戦略を効果的に伝える方法 | p.68 | 5分 | |
5 マイナス情報に“情け”をかけよう | p.77 | 5分 | |
6 組織慣性との戦い──企業変身の最強の敵 | p.86 | 5分 | |
7 人事スペシャリスト不用論──野村證券の「非」常識な人事部 | p.96 | 4分 | |
8 カラ元気のリーダーシップ | p.103 | 5分 | |
9 社内事情より社外事情を優先──野村證券のキープヤングの人事 | p.112 | 5分 | |
10 女がわからないで経営できるか | p.121 | 5分 | |
11 人づくりは人選びから | p.130 | 4分 | |
12 計画のグレシャムの法則 | p.138 | 4分 | |
第二部 常識破りの戦略 | p.145 | 1分 | |
1 多角化を成功させるキーファクター | p.146 | 14分 | |
2 非常識な戦略で活路を開く | p.172 | 4分 | |
3 中堅企業海外進出の成功の条件 | p.180 | 10分 | |
4 夢と技術力と余裕──海外進出成功のキーファクター | p.199 | 7分 | |
5 安全運転は新事業の敵 | p.212 | 14分 |
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