多国籍な人とビジネスを行うための心構えを説いた本です。グローバルビジネスを展開している著者が、いかに「異質」な者と一緒に仕事をしていくかを紹介しています。
■異質との接点は似て非なるもの
文化の違う相手を理解し、こちらの意図を伝え、交流し、説得・交渉し、さらにチーム、組織のリーダーでやっていくためには、異質との接点のあり方を同質との接点のあり方の延長線上に描くのではなく、似て非なるものとして認識を改める事が必要である。そして、その対応力が同質社会で自然と身に付かないのであれば、意図的に訓練する他ない。
多様性は、自分の限界をはるかに超えた事を可能にする。今まで当然だと思っていた自国を、他国の目から見る事で、新たな価値を発見する事もできる。国の枠を超えた活動では、多様性を内包した方が可能性は広がる。各メンバーの強みの合わせ技で、結果としてグループの視点・経験が豊富になる。
多様性は、意思決定の質を確実に上げる。同質な集団においては、対立意見が生じなかったり、空気を読むために同調に傾いたりして、正しい意思決定が下されるべき場面で下されない事が多々ある。企業の致命的な失敗は戦略や組織に起因する問題というよりは、意思決定構造に起因する事がほとんどである。多様性はお互いに「違うこと」が前提となるため、集団で妄信するリスクを減らす。
多くの違った文化で育った人々が集まると、それぞれの前提条件や常識が違う。それを擦り合わせ、意思統一して、モチベーションを上げていくのは大変な作業である。様々なバックグラウンドを持った人間が集まるから、メンバー間に相違点はたくさんある。何を「相」という共通点として保持すべきか、何を有益な「異」としてチームに残しておくか。その意味でリーダーの仕事は以下の内容に集約される。
・「相」を定義すること
・「相」を守ること
・「異」を最大限に活用すること
・「異」を尊重する文化を創ること
多様性から価値を創造する場面において、これらの項目はリーダーに必須の仕事となる。
「同質」の中に「異質」を見いだすのは、かけている眼鏡を別の眼鏡に変えるほどの認識の変化を要する。「同質」は「異質」の中の特例として見る、「異質」を巻き込むために普段から構えられるかが大切である。
著者 川崎 貴聖
1979年生まれ。レッドホースコーポレーション CEO KPMG LLP(あずさ監査法人国際部)入所後、株式会社コーポレイトディレクション(CDI)に参画。後に同社アソシエイトパートナー及びCDI上海の総経理に就任。公認会計士
帯 経営共創基盤 代表取締役CEO 冨山 和彦 |
日経ビジネスアソシエ 2015 年 02 月号 [雑誌] |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.1 | 3分 | |
序 章 赤兎馬のDNA | p.13 | 8分 | |
第1章 青年期の基礎体力づくり | p.31 | 14分 | |
第2章 異質へ向かう姿勢 | p.63 | 12分 | |
第3章 異質への順応 | p.89 | 14分 | |
第4章 異質との交流 | p.119 | 13分 | |
第5章 異質の説得・交渉 | p.147 | 15分 | |
第6章 Global‐Minded Japanese | p.181 | 8分 |