稲盛和夫氏が、55歳から81歳までに行った6回の講演内容が書かれた本です。経営者に向けて、哲学の必要性を説き、仏教の教えから、人格を高める方法を説いています。
■人生の意味
人生とは何だろう、人間とは何だろうという事を絶えず考えてきた。安岡正篤先生の本には、その答えが簡潔明瞭に書かれている。人生は運命として決まっている。しかしそれは天命であり、宿命ではない。その人の思いと行いによって運命は変えられるという事を、先生は明確に仰っている。そして、運命とはその人の行いによって変わるものであり、同時に禍福とは自分が思い、求める事によって得られるものであると、仰っている。
仏教には「思念は業をつくる」という言葉があるが、それも同じこと。業はカルマとも言うが、物事を思ったり念じたりすると、仏教でいう因果応報の「因」(原因)をつくる。業は原因ができると、必ず現象として現れる。これが因果応報である。
私達一人ひとりが生まれてきた人生の目的は、世のため人のために尽くす事である。仏教では一燈照隅と言うが、どんな人でも何がしかの素晴らしい役割を持って生まれてきた。その役割を通じて、世のため人のために尽くす事が大事である。そうして自分の運命を変える事ができる。
■人生の目的
我々はこの世に生をうけ、運命と因果応報の2つの法則によって波瀾万丈の人生を生きている。人生の目的とは「心を高める」事である。「心を純化する」「心を浄化する」「人間性を高める」「人格を高める」。これらが人生の目的である。
これをもっと具体的に言い換えると、世のため人のために尽くすという事になる。人間ができていなければ、心が高まっていなければ、世のため人のために尽くす事などできるものではない。
■六波羅蜜
いかに「善きこと」に努めるかという事が大切である。お釈迦様が説かれた「六波羅蜜」が、そのための方法を示している。お釈迦様が、魂を磨き、心を高め、悟りの境地に到達するための修行として説いておられる事が、善き事に努める事と同じである。
①布施
自分が今ある事に感謝し、他に善かれかしと願い、他人様に何かしてあげること。思いやりの心、優しい心をもって、世のため人のために尽くすこと。
②持戒
人間としてしてはならない事を定めた戒めをひたすら守っていくこと。人間として何が正しいのかと問い、その正しい事を貫き、してはならない事はしないということ。
③精進
ただ一所懸命に、誰にも負けない努力で働くこと。
④忍辱
苦しいこと、辛いことを耐え忍ぶこと。
⑤禅定
心を静かにすること。
⑥智慧
上記5つの事に、日々懸命に努めていく事で、悟りの境地、つまり偉大な仏の智慧に至る事ができる。
著者 稲盛 和夫
1932年生まれ。京セラ・第二電電(現・KDDI)創業者 日本航空(JAL)会長 1959年に社員8人で京都セラミツク(現京セラ)を設立。1984年には第二電電(DDI)を設立。 現在は、若手経営者向けの経営塾「盛和塾」を主宰し、若手経営者を育成する。独特な経営管理手法は「アメーバ経営」と呼ばれる。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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第一講 心と経営 | p.17 | 17分 | |
第二講 なぜ経営者には哲学が必要なのか | p.57 | 19分 | |
第三講 安岡正篤師に学んだ経営の極意 | p.101 | 13分 | |
第四講 人生の目的――人は何のために生きるのか | p.131 | 16分 | |
第五講 心を高め、魂を磨く | p.169 | 15分 | |
第六講 運命を開く道 | p.205 | 20分 |
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