iMac、iPhone、iPad、MacBook Airなど数々のアップル製品を創り出してきたデザイナー、ジョナサン・アイブの伝記。その生い立ちから、デザイン哲学が紹介されています。
■生い立ち
ジョニーは子供の頃からいつも、もののしくみを知りたがった。ものの構造に興味を持ち、ラジオやカセットレコーダーを慎重に分解しては、それがどんな風に組み立てられているか、部品がどのようにつながり合っているかを確かめていた。銀細工の職人だった父親のマイクは、ことあるごとにデザインの話題にジョニーを引き入れ、息子の興味を育てていた。マイクのクリスマスプレゼントは、自分の工房を息子に好きなだけ使わせる事だった。但し、マイクは1つだけ条件を出した。作りたいものを手で描くこと。「昔から手作りのものは美しいと感じていた。本当に大切なのは、そこに込められた手間と心配りなんだ」とジョニーは語っている。
16歳にして、ジョニーの才能はデザイン業界の注目を集めていた。ジョニーはウォルトン高校で質の高いデザインテクノロジー教育を受け、成績は全国でも上位12%に入っていた。どの大学でも選べたが、ニューカッスル・ポリテクニックに進み、プロダクトデザインを専攻した。
アップルが潰れそうになった時、ジョニーがジョブズから学んだ教訓がある。
「アップルは倒産寸前でしたが、人間が死を通して生についての多くを学ぶのと同じで、死にかけた会社から命ある企業についてたくさんの事を学んだ。もう少しで倒産という瀬戸際に立たされれば、少しはお金を儲けようと考えるのが普通である。だが、スティーブの頭にあったのは違う事だった。製品が良くなかった、だからもっといい製品を作るんだ、というのが彼の答えだった」
ジョニーは、ジョブズの一点集中の哲学を大切に守っている。ジョブズはいつも、集中とはイエスという事ではなく、ノーという事だと語っていた。ジョニーの指導のもと、アップルは「そこそこにいい」ものであっても「偉大な製品」でなければ却下する事を厳しく自分達に課している。
ジョニー・アイブに1つだけ秘訣があるとすれば、それはシンプル化の哲学に奴隷のように従っている事だ。失敗もあれば発表にいたらない製品もあるが、多くのブレークスルーを生み出してきたのは、この姿勢だ。膨大な時間と労力を費やして隅々にまで気を配り、物事を正しくやり遂げる。それがジョニー流の作法なのだ。
ジョニーの究極の目標は、デザインを消す事だ。ユーザーがデザインを意識しないこと、それがジョニーにとって一番うれしい。目標は、シンプルなもの、持ち主が思い通りにできるものだ。デザイナーが正しい仕事をすれば、ユーザーは対象により近づき、より没頭するようになる。例えば、新しいiPadのiPhotoアプリにユーザーは我を忘れて没頭し、iPadを使っている事など忘れてしまう。
著者 リーアンダー ケイニー
1965年生まれ。CultofMac.com編集者兼発行人 ジャーナリスト WiredやMac Weekの元シニアリポーターで、Cult of Macの運営者。20年以上にわたって、コンピューターやテクノロジーに関する記事の執筆を行っており、4冊の書籍を出版しているベストセラー作家。記者兼編集者として12年以上にわたってアップルを取材している。
ビジネスブックマラソン 土井 英司 |
週刊ダイヤモンド2015年2/7号[雑誌] 丸善書店丸の内本店和書グループ 田中 大輔 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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まえがき | p.16 | 6分 | |
1章 生い立ち | p.22 | 11分 | |
2章 イギリスのデザイン教育 | p.36 | 17分 | |
3章 ロンドンでの生活 | p.58 | 29分 | |
4章 アップル入社 | p.96 | 38分 | |
5章 帰ってきたジョブズ | p.146 | 38分 | |
6章 ヒット連発 | p.196 | 21分 | |
7章 鉄のカーテンの向こう側 | p.224 | 12分 | |
8章 iPod | p.240 | 15分 | |
9章 製造・素材・そのほかのこと | p.260 | 24分 | |
10章 iPhone | p.292 | 23分 | |
11章 iPad | p.322 | 11分 | |
12章 ユニボディ | p.336 | 11分 | |
13章 サー・ジョニー | p.350 | 21分 |
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