ビッグデータの活用で、ビジネスのあり方が変わりつつある。従来型の消費ビジネスから、データをもとにした新たなマーケティングのトレンドを解説した一冊です。
■データに訊く
Web環境、センサー、ストレージ技術の進歩によって、我々は数年前に比べると途方もない量と頻度と種類のデータに触れるきっかけを得ている。このような環境において、我々の生活に大量に散在しているあらゆるデータをうまく利用すれば、これまで分からなかった現象や消費者の動向をつかみ、新たな価値を生み出す事ができる。データに対して興味深く「訊く」事で、単なるデータを「スマートデータ(価値を生むデータ)」に変化させる。
データは単に保持しているだけでは「死蔵データ」となってしまう。積極的に問いかける「訊く」事をしなければならない。
従来の消費ビジネスからコンテクストクリエーションによる新しいビジネスに変わりつつある。
消費ビジネスとは、大量生産・大量消費から生まれるビジネスである。「情報の非対称性」があり、企業側から一方的にデータが流れている状況であり、ブランディングという実態のないものを差別化に使う事もあった。
それに対して、コンテクストクリエーションによる新しいビジネスは、究極的には、ワン・トゥ・ワンの企業、消費者関係である。これはネットワーク社会によって「情報の非対称性」がなくなったためである。つまり、消費者もデータを発信するようになった。そのデータに「訊く」という事をしなければ、消費者のニーズを受け取る事ができなくなり、ニーズに合った商品、サービスが提供できなくなる。最終的には、最小限度のインターフェースを現実世界に配置し、そのインターフェースでお互いのデータをやり取りする事により、ニーズと商品、サービス提供を行う。商品、サービス自体、つまりコンテントより、背景などのコンテクストが重要となる。よって、買う事や持っている事よりも、いつ、どこで、誰と、経験を共有できたかという事がステイタスとなるのである。
コンテクストクリエーションのためには「メタ化」と「インターフェースの設計」が必要である。「メタ化」とは、絶対必要な機能を果たすためのインターフェースのみを現実に残し、実際の内部処理や使用状況をインターネット上に保持するような商品、サービス形態に変化していく事を指す。実際の内部処理や使用状況をインターネット上に保持する事で、データを介して商品、サービスからニーズ、さらにニーズから商品やサービス提供するというサイクルができあがる。このサイクルの中でインターフェースから獲得したデータから、いかに訊き出すかが重要である。
さらにインターフェースの設計はプライバシーと商品、サービスのメリット、利便性の相互対称な形を考えたデザインにする必要がある。そして、サイクルを速く回し、なるべくニーズに速くリーチさせる。
著者 中西 崇文
1978年生まれ。国際大学グローバル・コミュニケーション・センター准教授・主任研究員 独立行政法人情報通信研究機構にてナレッジクラスタシステムの研究開発、大規模データ分析・可視化手法に関する研究開発などに従事し、2014年より現職。 専門は、データ分析システム、統合データベース、感性情報処理、メディアコンテンツ分析
帯 筑波大学大学院教授 北川 高嗣 |
章名 | 開始 | 目安 | 重要度 |
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はじめに | p.3 | 4分 | |
第1章 モノは買わないが、お金は使う消費者 | p.11 | 28分 | |
第2章 メタ化による価値創造 | p.49 | 25分 | |
第3章 いつもβ版サイクル | p.83 | 30分 | |
第4章 サービス時代とパーソナルデータ | p.123 | 23分 | |
おわりに | p.154 | 2分 |